訪問看護の実務

訪問看護指示書の依頼と有効期間:主治医とのやりとり

公開|内容の確認:

対象:ケアマネジャー・訪問看護師・病院の退院支援看護師の方

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)

この記事の監修

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

Med-Tasuki(メドタスキ)は、監修者が開発した、在宅医療・介護の施設どうしが患者さんの受け入れをチャットで相談できる無料のサービスです。近くの施設へまとめて相談できる一括依頼も使えます。

ひとことで言うと

訪問看護は主治医の「訪問看護指示書」がないと始められません。有効期間は最長6か月で、期限が切れる前に更新を頼みます。急に頻回の訪問が要るときは「特別訪問看護指示書」(14日間)を使います。

訪問看護を始めるとき、また続けるときに必ず要るのが、主治医が書く「訪問看護指示書」です。誰がいつ頼むのか、有効期間はどれくらいか、種類による違いは何かを、実務の順にまとめます。

01訪問看護指示書とは

訪問看護指示書は、主治医が訪問看護ステーションに「この患者さんにこういう看護をしてください」と指示する文書です。医療保険でも介護保険でも、訪問看護は指示書がなければ行えません。指示書には病名、病状、留意点、処置の内容、訪問の目安などが書かれます。

最長6か月

訪問看護指示書の有効期間

主治医が期間を決める

14日間

特別訪問看護指示書

急に頻回の訪問が要るとき。原則月1回

主治医

書くのは1人

複数の医療機関から同時には出せない

訪問看護指示書の種類(2026年9月時点)
種類使う場面有効期間
訪問看護指示書通常の訪問看護を始める・続ける最長6か月(医師が定める)
特別訪問看護指示書急に病状が悪くなり、週4日以上など頻回の訪問が一時的に必要なとき14日間。原則月1回(気管カニューレを使う方・真皮を越える褥瘡の方は月2回まで)
精神科訪問看護指示書精神科の病気で精神科訪問看護を受けるとき最長6か月
在宅患者訪問点滴注射指示書週3日以上の点滴を訪問看護師が行うとき7日間

特別訪問看護指示書が出ている期間は、介護保険の方も医療保険の訪問看護になります。

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
指示書は「書類」に見えますが、私は訪問看護師さんへの手紙だと思って書いています。何を見てほしいか、どこまでは看護師さんの判断でよいか、どうなったら連絡してほしいかが伝わる指示書だと、患者さんの変化に早く対応できます。

02誰がいつ頼むか

  1. 1

    訪問看護を使うことが決まる

    ケアマネジャーが介護保険のケアプランに入れる、または病院の退院支援で医療保険の訪問看護が必要になる、のどちらかです。

  2. 2

    訪問看護ステーションが主治医に指示書を依頼する

    多くの場合、訪問看護ステーションが主治医あてに依頼文書を送ります。ケアマネジャーや病院が主治医に事前に一言伝えておくと早く進みます。

  3. 3

    主治医が指示書を書き、ステーションに送る

    退院時は病院の主治医が、在宅では訪問診療医やかかりつけ医が書きます。

  4. 4

    初回訪問

    指示書が届いてから訪問看護が始まります。指示書が届く前の訪問はできません。

  5. 5

    報告書と更新

    訪問看護ステーションは毎月「訪問看護報告書」を主治医に送り、期限が切れる前に指示書の更新を依頼します。

退院直後から訪問看護を使う場合、指示書を病院の主治医が書き、退院後の訪問診療医に切り替えるタイミングで、新しい主治医が指示書を書き直します。この切り替えの時期に指示書が途切れないよう、退院支援看護師と訪問看護ステーションで日付を確かめておきます。

03有効期間が切れないようにするコツ

  • 有効期間は指示書に書かれた期間です。「6か月」が上限で、医師が1か月・3か月などにすることもあります。開始日と終了日を訪問看護ステーションとケアマネジャーが共有しておきます。
  • 更新の依頼は期限の2〜3週間前に。主治医の外来や訪問の予定に合わせて、報告書と一緒に送ると忘れられにくくなります。
  • 主治医が変わったとき(退院・転院・訪問診療の開始)は、新しい主治医の指示書が要ります。前の指示書の期間が残っていても、書き直してもらいます。
  • 病状が変わって指示の内容が合わなくなったときは、期限の途中でも新しい指示書を頼めます。
  • 複数の訪問看護ステーションが入るときは、それぞれのステーションあてに指示書が要ります。

指示書が切れていた場合

有効期間が切れた状態で訪問した分は、訪問看護の費用を請求できません。訪問看護ステーションにとって大きな損失になるので、期限の管理は最優先です。ケアマネジャーも、モニタリングのときに指示書の期限を確認する習慣をつけると安心です。

04特別訪問看護指示書の使いどころ

肺炎で数日おきに点滴が要る、終末期で状態が日ごとに変わる、褥瘡が急に悪くなった、といったときに、主治医が「特別訪問看護指示書」を出すと、14日間は医療保険で毎日でも訪問できます。介護保険の方も、この期間は医療保険の訪問看護になります。

特別訪問看護指示書を検討する場面
  1. Q1.急に病状が悪くなり、一時的に週4日以上の訪問が必要
    はい
    主治医に特別訪問看護指示書を相談(14日間)
    いいえ
  2. Q2.週3日以上の点滴を看護師が行う
    はい
    在宅患者訪問点滴注射指示書も合わせて(7日間)
    いいえ
  3. Q3.頻回の訪問が長く続きそう(難病・終末期など)
    はい
    別表7・別表8の該当や、医療保険への切り替えを主治医と確認
    いいえ
通常の指示書の範囲で訪問の回数を調整する
前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
特別訪問看護指示書は、患者さんの状態が動いているときに、看護師さんに毎日入ってもらうための道具です。「そろそろ必要かもしれません」と訪問看護師さんから早めに言ってもらえると、私も出しやすくなります。遠慮せず相談してください。

05指示書の依頼で伝えるとよいこと

主治医への依頼文書に書くこと

  • 患者さんの氏名・生年月日・住所
  • 訪問看護を使う理由(退院後の医療処置、状態の観察、リハビリ、家族の負担 など)
  • 医療保険か介護保険か、介護保険なら要介護度
  • 希望する訪問の回数と、ほかに入るサービス
  • 訪問看護ステーションの名前・連絡先・指示書の送付先(FAX 番号など)
  • 初回訪問の希望日(指示書がいつまでに要るか)

06指示書に書いてほしいこと(訪問看護師の立場から)

指示書は主治医が書くものですが、訪問看護ステーションから「こういう内容を入れてほしい」と伝えることはできます。指示が具体的なほど、看護師は現場で迷わず動けます。依頼のときに、次の点を主治医に伝えておくと、指示書の質が上がります。

  • 処置の内容と頻度:褥瘡の処置は何を使って何日ごとか、カテーテルの交換は誰がするか、点滴は何を何日おきか
  • 観察の目安:血圧・体温・酸素飽和度がどの値になったら連絡するか
  • 看護師の裁量:頓服薬をどの症状のときに使ってよいか、浣腸や摘便をしてよいか
  • リハビリ:理学療法士などの訪問を含めるか、目標は何か(歩行・座位保持・嚥下など)
  • 緊急時の連絡先:主治医の日中と夜間の連絡先、つながらないときの代わり

07よくある質問

  • 指示書の費用はかかる?:主治医の医療機関が「訪問看護指示料」を算定し、患者さんに自己負担が生じます。金額は医療機関に確かめます。
  • かかりつけ医と訪問診療医が両方いる。どちらが書く?:訪問看護の内容に責任を持つ医師(多くは訪問診療医)です。2人の医師で分担する場合も、指示書は1人の医師からです。
  • 病院の主治医が「在宅のことはわからない」と言う:退院時は病院の主治医が書き、在宅の主治医が決まったら書き直す、と伝えれば多くの場合は応じてもらえます。退院支援看護師や MSW に間に入ってもらいます。
  • 介護保険のケアプランに訪問看護を入れる前に指示書が要る?:ケアプランは指示書がなくても作れますが、サービスの開始には指示書が要ります。並行して進めます。

08受け入れ先の探し方

Med-Tasuki(メドタスキ)では、訪問看護ステーションを地域や対応内容(24時間対応・対応できる医療処置・職種)で探せます。医療機関・介護事業所の方は、一括依頼で近くのステーションにまとめて受け入れを相談できます。

参考にした情報

監修者のプロフィール

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
前川 裕貴

Maekawa Hirotaka

脳神経内科専門医・頭痛専門医

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。

2012〜2018年順天堂大学 医学部 医学科
2018〜2020年東京逓信病院 初期臨床研修
2020〜2023年東京大学医学部附属病院 脳神経内科 特任臨床医
2023年〜埼玉精神神経センター 頭痛専門外来
荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
昭和医科大学 脳神経内科 客員講師
2025年〜株式会社Iris Wellness設立

在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。

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監修:前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医)/この記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。受け入れの状況や費用は各施設に、治療の判断は主治医にご相談ください。