ひとことで言うと
要介護認定を受けている方は原則として介護保険の訪問看護です。ただし、別表7の病気・特別訪問看護指示書の期間・精神科訪問看護などは医療保険になります。40歳未満と、認定を受けていない方は医療保険です。
同じ訪問看護でも、医療保険で行う場合と介護保険で行う場合があり、回数の決まりや費用の仕組み、ケアプランの扱いが変わります。判断の順番を整理します。
01判断の順番
- Q1.40歳未満(介護保険の対象外)はい医療保険いいえ
- Q2.要介護認定を受けていない(申請していない・非該当)はい医療保険いいえ
- Q3.別表7(厚生労働大臣が定める疾病等)の病気があるはい医療保険(認定があっても)いいえ
- Q4.特別訪問看護指示書が出ている期間はい医療保険(その14日間だけ)いいえ
- Q5.精神科訪問看護指示書による訪問看護(認知症を除く)はい医療保険いいえ
大まかに言うと「介護保険の認定を受けていれば介護保険が優先。ただし医療の必要性が高い決まった場合は医療保険」です。同じ患者さんでも、時期によって保険が切り替わることがあります。

保険の区分は制度の話に見えますが、実際には「その時期にどれくらい医療が必要か」を表しています。特別指示書で医療保険に切り替わる期間は、私も訪問看護師さんと連絡を密にして、状態が落ち着いたら介護保険に戻す時期を一緒に決めています。
02医療保険と介護保険で何が変わるか
| 医療保険 | 介護保険 | |
|---|---|---|
| 訪問の回数 | 原則週3日まで(別表7・別表8・特別指示書の期間は制限なし) | ケアプランで決める(支給限度額の範囲内) |
| 1回の時間 | 30〜90分が基本 | 20分未満・30分未満・30〜60分・60〜90分の区分 |
| 使えるステーションの数 | 原則1か所(別表7などは2〜3か所) | 複数可 |
| 自己負担 | 医療費の1〜3割 | 介護費の1〜3割 |
| ケアプラン | 介護保険の限度額の枠には入らない | 限度額の枠に入る |
| 指示書 | 訪問看護指示書 | 訪問看護指示書(同じ様式) |
週3日
医療保険の原則の上限
別表7・8、特別指示書の期間は例外
限度額の外
医療保険の訪問看護
介護保険の枠を使わない
同じ様式
指示書
どちらの保険でも主治医が書く
03別表7・別表8とは
「別表7」は、末期のがん、ALS や多系統萎縮症などの神経難病、人工呼吸器を使っている方など、医療保険で訪問看護を行うと決められた病気・状態の一覧です。「別表8」は、在宅酸素や気管カニューレ、留置カテーテル、真皮を越える褥瘡などの医療処置や状態の一覧で、こちらは保険の区分は変えませんが、医療保険で週4日以上の訪問や複数のステーションの利用ができるようになります。
| 別表7 | 別表8 | |
|---|---|---|
| 何の一覧か | 病気・状態(末期がん、神経難病、人工呼吸器 など) | 医療処置・状態(在宅酸素、カテーテル、褥瘡 など) |
| 保険の区分 | 医療保険になる(認定があっても) | 変えない(介護保険の方は介護保険のまま) |
| 医療保険での回数 | 週4日以上・1日複数回・複数ステーションが可能 | 同じく可能(医療保険の方の場合) |
別表7の病気の一覧は「別表7(厚生労働大臣が定める疾病等)とは」の記事にまとめています。
04ケアマネジャーが押さえること
- 医療保険の訪問看護は、介護保険の支給限度額の枠を使いません。その分、訪問介護や福祉用具に枠を回せます。
- 介護保険から医療保険に切り替わる時期(別表7の診断がついた、特別指示書が出た)は、訪問看護ステーションから連絡が来ます。ケアプランの訪問看護の位置づけを書き換えます。
- 医療保険の訪問看護でも、ケアプランには「医療保険で訪問看護を利用」と書き、週の予定表に入れておくと、ほかのサービスとの重なりを防げます。
- 40〜64歳で介護保険を使うには、16の特定疾病に当てはまる必要があります。がん末期や神経難病の多くは特定疾病に入っていますが、訪問看護は別表7で医療保険になる、という二段構えです。
利用者への説明
保険が切り替わると、請求書の出どころと自己負担の計算が変わります。ご本人・ご家族には「今月から訪問看護は医療保険に変わります。介護保険の限度額には入らなくなります」と、切り替えのたびに説明すると混乱が減ります。

別表7の診断がつくと訪問看護の使い方が大きく広がるので、私は診断書や指示書に病名を正確に書くよう心がけています。「もしかしたら別表7に入るのでは」という病気がある方は、ケアマネジャーから主治医に確かめてもらえると助かります。
05切り替わる場面の具体例
| 場面 | 前 | 後 |
|---|---|---|
| 要介護1の方が肺炎で一時的に毎日の点滴が必要になった | 介護保険 | 特別訪問看護指示書の14日間だけ医療保険。終われば介護保険に戻る |
| 要介護3の方に末期がんの診断がついた | 介護保険 | 医療保険(別表7)。認定は残るが訪問看護は医療保険 |
| 介護保険を申請していない70代の方が退院後に訪問看護を使う | 医療保険 | 認定が出たら介護保険(別表7・8に当たらなければ) |
| 50代でパーキンソン病(ヤール3以上)の方 | 医療保険 | 特定疾病で介護保険を申請できるが、訪問看護は別表7で医療保険のまま |
06よくある質問
- 医療保険の訪問看護は高い?:自己負担の割合は同じ1〜3割ですが、計算のもとになる額と加算が違うので、月の負担は変わります。高額療養費や医療費助成が使える方は、上限で頭打ちになります。
- 同じ月に両方の保険を使うことはある?:あります。特別指示書の期間の前後で切り替わると、同じ月に介護保険の分と医療保険の分が発生します。請求は訪問看護ステーションが分けて行います。
- 要支援の方でも医療保険になる?:別表7の病気や特別指示書の期間は、要支援でも医療保険です。
- 精神科訪問看護と認知症の関係は?:認知症は精神科訪問看護の対象から除かれているため、認知症の方の訪問看護は介護保険(認定があれば)です。
07訪問看護ステーションからの請求の見方
ご家族が混乱しやすいのは、保険が切り替わった月の請求です。介護保険の分は、利用票・提供票に載り、介護保険の自己負担として請求されます。医療保険の分は、訪問看護療養費として医療保険の自己負担で請求され、高額療養費の計算に入ります。同じステーションから2種類の請求書が届くことがある、とあらかじめ伝えておくと問い合わせが減ります。
- 介護保険の分:ケアマネジャーの給付管理の対象。限度額の計算に入る
- 医療保険の分:給付管理の対象外。ケアプランには「医療保険で利用」と記載
- 難病の医療費助成・自立支援医療などを受けている方:医療保険の訪問看護はその助成の対象になることがある。指定を受けたステーションかを確かめる
08受け入れ先の探し方
Med-Tasuki(メドタスキ)では、訪問看護ステーションを地域や対応内容で探せます。医療機関・介護事業所の方は、一括依頼で近くのステーションにまとめて受け入れを相談できます。
参考にした情報
監修者のプロフィール

Maekawa Hirotaka
脳神経内科専門医・頭痛専門医
地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者
脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。
Med-Tasukiを開発した理由を読む在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。