訪問看護の実務

訪問看護は医療保険か介護保険か:年齢・病名・状態で決まる

公開|内容の確認:

対象:ケアマネジャー・訪問看護師・病院の MSW・退院支援看護師の方

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)

この記事の監修

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

Med-Tasuki(メドタスキ)は、監修者が開発した、在宅医療・介護の施設どうしが患者さんの受け入れをチャットで相談できる無料のサービスです。近くの施設へまとめて相談できる一括依頼も使えます。

ひとことで言うと

要介護認定を受けている方は原則として介護保険の訪問看護です。ただし、別表7の病気・特別訪問看護指示書の期間・精神科訪問看護などは医療保険になります。40歳未満と、認定を受けていない方は医療保険です。

同じ訪問看護でも、医療保険で行う場合と介護保険で行う場合があり、回数の決まりや費用の仕組み、ケアプランの扱いが変わります。判断の順番を整理します。

01判断の順番

訪問看護はどちらの保険か
  1. Q1.40歳未満(介護保険の対象外)
    はい
    医療保険
    いいえ
  2. Q2.要介護認定を受けていない(申請していない・非該当)
    はい
    医療保険
    いいえ
  3. Q3.別表7(厚生労働大臣が定める疾病等)の病気がある
    はい
    医療保険(認定があっても)
    いいえ
  4. Q4.特別訪問看護指示書が出ている期間
    はい
    医療保険(その14日間だけ)
    いいえ
  5. Q5.精神科訪問看護指示書による訪問看護(認知症を除く)
    はい
    医療保険
    いいえ
介護保険(要支援・要介護の認定を受けている方の通常の訪問看護)

大まかに言うと「介護保険の認定を受けていれば介護保険が優先。ただし医療の必要性が高い決まった場合は医療保険」です。同じ患者さんでも、時期によって保険が切り替わることがあります。

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
保険の区分は制度の話に見えますが、実際には「その時期にどれくらい医療が必要か」を表しています。特別指示書で医療保険に切り替わる期間は、私も訪問看護師さんと連絡を密にして、状態が落ち着いたら介護保険に戻す時期を一緒に決めています。

02医療保険と介護保険で何が変わるか

訪問看護の医療保険と介護保険の違い(2026年9月時点)
医療保険介護保険
訪問の回数原則週3日まで(別表7・別表8・特別指示書の期間は制限なし)ケアプランで決める(支給限度額の範囲内)
1回の時間30〜90分が基本20分未満・30分未満・30〜60分・60〜90分の区分
使えるステーションの数原則1か所(別表7などは2〜3か所)複数可
自己負担医療費の1〜3割介護費の1〜3割
ケアプラン介護保険の限度額の枠には入らない限度額の枠に入る
指示書訪問看護指示書訪問看護指示書(同じ様式)

週3日

医療保険の原則の上限

別表7・8、特別指示書の期間は例外

限度額の外

医療保険の訪問看護

介護保険の枠を使わない

同じ様式

指示書

どちらの保険でも主治医が書く

03別表7・別表8とは

「別表7」は、末期のがん、ALS や多系統萎縮症などの神経難病、人工呼吸器を使っている方など、医療保険で訪問看護を行うと決められた病気・状態の一覧です。「別表8」は、在宅酸素や気管カニューレ、留置カテーテル、真皮を越える褥瘡などの医療処置や状態の一覧で、こちらは保険の区分は変えませんが、医療保険で週4日以上の訪問や複数のステーションの利用ができるようになります。

別表7と別表8の違い
別表7別表8
何の一覧か病気・状態(末期がん、神経難病、人工呼吸器 など)医療処置・状態(在宅酸素、カテーテル、褥瘡 など)
保険の区分医療保険になる(認定があっても)変えない(介護保険の方は介護保険のまま)
医療保険での回数週4日以上・1日複数回・複数ステーションが可能同じく可能(医療保険の方の場合)

別表7の病気の一覧は「別表7(厚生労働大臣が定める疾病等)とは」の記事にまとめています。

04ケアマネジャーが押さえること

  • 医療保険の訪問看護は、介護保険の支給限度額の枠を使いません。その分、訪問介護や福祉用具に枠を回せます。
  • 介護保険から医療保険に切り替わる時期(別表7の診断がついた、特別指示書が出た)は、訪問看護ステーションから連絡が来ます。ケアプランの訪問看護の位置づけを書き換えます。
  • 医療保険の訪問看護でも、ケアプランには「医療保険で訪問看護を利用」と書き、週の予定表に入れておくと、ほかのサービスとの重なりを防げます。
  • 40〜64歳で介護保険を使うには、16の特定疾病に当てはまる必要があります。がん末期や神経難病の多くは特定疾病に入っていますが、訪問看護は別表7で医療保険になる、という二段構えです。

利用者への説明

保険が切り替わると、請求書の出どころと自己負担の計算が変わります。ご本人・ご家族には「今月から訪問看護は医療保険に変わります。介護保険の限度額には入らなくなります」と、切り替えのたびに説明すると混乱が減ります。

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
別表7の診断がつくと訪問看護の使い方が大きく広がるので、私は診断書や指示書に病名を正確に書くよう心がけています。「もしかしたら別表7に入るのでは」という病気がある方は、ケアマネジャーから主治医に確かめてもらえると助かります。

05切り替わる場面の具体例

保険が切り替わる場面(2026年9月時点)
場面
要介護1の方が肺炎で一時的に毎日の点滴が必要になった介護保険特別訪問看護指示書の14日間だけ医療保険。終われば介護保険に戻る
要介護3の方に末期がんの診断がついた介護保険医療保険(別表7)。認定は残るが訪問看護は医療保険
介護保険を申請していない70代の方が退院後に訪問看護を使う医療保険認定が出たら介護保険(別表7・8に当たらなければ)
50代でパーキンソン病(ヤール3以上)の方医療保険特定疾病で介護保険を申請できるが、訪問看護は別表7で医療保険のまま

06よくある質問

  • 医療保険の訪問看護は高い?:自己負担の割合は同じ1〜3割ですが、計算のもとになる額と加算が違うので、月の負担は変わります。高額療養費や医療費助成が使える方は、上限で頭打ちになります。
  • 同じ月に両方の保険を使うことはある?:あります。特別指示書の期間の前後で切り替わると、同じ月に介護保険の分と医療保険の分が発生します。請求は訪問看護ステーションが分けて行います。
  • 要支援の方でも医療保険になる?:別表7の病気や特別指示書の期間は、要支援でも医療保険です。
  • 精神科訪問看護と認知症の関係は?:認知症は精神科訪問看護の対象から除かれているため、認知症の方の訪問看護は介護保険(認定があれば)です。

07訪問看護ステーションからの請求の見方

ご家族が混乱しやすいのは、保険が切り替わった月の請求です。介護保険の分は、利用票・提供票に載り、介護保険の自己負担として請求されます。医療保険の分は、訪問看護療養費として医療保険の自己負担で請求され、高額療養費の計算に入ります。同じステーションから2種類の請求書が届くことがある、とあらかじめ伝えておくと問い合わせが減ります。

  • 介護保険の分:ケアマネジャーの給付管理の対象。限度額の計算に入る
  • 医療保険の分:給付管理の対象外。ケアプランには「医療保険で利用」と記載
  • 難病の医療費助成・自立支援医療などを受けている方:医療保険の訪問看護はその助成の対象になることがある。指定を受けたステーションかを確かめる

08受け入れ先の探し方

Med-Tasuki(メドタスキ)では、訪問看護ステーションを地域や対応内容で探せます。医療機関・介護事業所の方は、一括依頼で近くのステーションにまとめて受け入れを相談できます。

参考にした情報

監修者のプロフィール

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
前川 裕貴

Maekawa Hirotaka

脳神経内科専門医・頭痛専門医

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。

2012〜2018年順天堂大学 医学部 医学科
2018〜2020年東京逓信病院 初期臨床研修
2020〜2023年東京大学医学部附属病院 脳神経内科 特任臨床医
2023年〜埼玉精神神経センター 頭痛専門外来
荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
昭和医科大学 脳神経内科 客員講師
2025年〜株式会社Iris Wellness設立

在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。

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監修:前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医)/この記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。受け入れの状況や費用は各施設に、治療の判断は主治医にご相談ください。