ひとことで言うと
別表7の病気の方や特別訪問看護指示書が出ている方は、医療保険で1日2回・3回以上の訪問看護を受けられます。特別指示は原則月1回・14日以内です。
神経難病でたんの吸引や人工呼吸器、胃ろうからの栄養などが必要になると、1日に何度も訪問看護が必要になることがあります。また、肺炎のあとや退院した直後など、一時的に毎日の訪問が必要になる時期もあります。この記事では、医療保険の訪問看護で「週4日以上」「1日に複数回」の訪問ができる条件と、そのための特別訪問看護指示書をまとめます。金額や回数は、2026年6月の診療報酬改定のあとの告示・通知で確かめたもの(2026年9月時点)です。
まず押さえる:医療保険の訪問看護の基本の枠
- 医療保険の訪問看護は、原則として週3日までです。
- 訪問看護ステーションの訪問看護基本療養費は「1日につき」の費用です。同じ日の2回目・3回目の訪問は、条件を満たすと難病等複数回訪問加算で評価されます。
- 別表7(厚生労働大臣が定める疾病等)の病気の方と、別表8(特別な管理が必要な状態)の方は、週4日以上の訪問ができます。
- 別表7の病気の方は、要介護認定を受けていても、訪問看護は医療保険になります。
- 主治医が出す訪問看護指示書の有効期間は6か月以内です。
神経難病の多くは別表7に入っています。筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、パーキンソン病関連疾患(パーキンソン病はホーエン・ヤールの重症度分類ステージ3以上で、生活機能障害度が2度または3度の方)、多発性硬化症、重症筋無力症、進行性筋ジストロフィー症、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ハンチントン病、プリオン病などです。病名にかかわらず「人工呼吸器を使用している状態」も別表7に入ります。別表8には、気管カニューレや留置カテーテルを使用している状態、在宅人工呼吸指導管理を受けている状態、真皮を越える褥瘡の状態などが含まれます。
難病等複数回訪問加算とは
難病等複数回訪問加算は、対象の方に、必要に応じて1日に2回、または3回以上の訪問看護を行ったときに、訪問看護ステーションが1日につき算定する加算です。区分は「1日に2回」と「1日に3回以上」に分かれています。
- 対象1:別表7の病気の方、または別表8の状態の方(週3日を超える訪問が必要な方)
- 対象2:特別訪問看護指示書が出ている期間の方
- 金額(2026年9月時点):同じ建物でこの加算などを算定する利用者が1人か2人の場合(自宅で暮らす方の多くが当たります)、1日2回で4,500円、1日3回以上で8,000円(いずれも1日につき)
- 同じ建物に対象の利用者が3人以上いる場合は、人数が多いほど金額が下がります。2026年6月の改定で人数の区分が細かくなり(3〜9人、10〜19人、20〜49人、50人以上)、1日3回以上の場合は「月20日目まで」と「月21日目以降」でも分かれました
要介護認定を受けている方は、別表8だけでは医療保険にならない
要介護認定を受けている方の訪問看護は、原則として介護保険です。医療保険の訪問看護になるのは、別表7の病気の方、特別訪問看護指示書の期間中の方、精神科訪問看護の方などに限られます。別表8の状態でも、別表7の病気でなければ、ふだんの訪問看護は介護保険のままです。医療保険の加算の対象になるかどうかは、この区分もあわせて確かめましょう。
2026年6月の改定では、届け出た建物(集合住宅など)に住む方に、24時間の体制で計画的・随時の頻回の訪問看護を行う場合に、1日の訪問時間の合計と建物の利用者数で算定する「包括型訪問看護療養費」も新しくできました。対象は別表7・別表8の方と、特別訪問看護指示書の期間中の方です。
特別訪問看護指示書とは
特別訪問看護指示書は、主治医が診療にもとづき、急性増悪、終末期、退院直後などの理由で、一時的に週4日以上の頻回の訪問看護が必要だと認めたときに出す指示書です。ここでいう「一時的」とは、状態の変化などで、ふだんの訪問回数では対応できない場合のことです。ずっと頻回の訪問が必要という理由では出せません。理由は指示書に書きます。
- 期間:主治医の診療の日から14日以内です。
- 回数:原則として月1回です。気管カニューレを使用している方と、真皮を越える褥瘡(NPUAP分類のIII度・IV度、またはDESIGN-R2020分類のD3・D4・D5)の方は月2回まで出せます。
- 期間中にできること:週4日以上の訪問と、1日に複数回の訪問(難病等複数回訪問加算)ができます。
- 要介護認定を受けている方も、期間中の訪問看護は医療保険になります。
- 期間中に週4日以上の訪問が計画されていれば、2か所目の訪問看護ステーションも入れます。
- 主治医の側は、訪問看護指示料に特別訪問看護指示加算を算定します。
別表7の方は、特別指示がなくても頻回に訪問できる
別表7の病気の方は、特別訪問看護指示書がなくても、医療保険で週4日以上・1日に複数回の訪問看護を受けられます。特別指示が大きな意味を持つのは、別表7に当たらない方(ヤール分類ステージ3未満のパーキンソン病の方や、別表7に入らない病気でふだんは介護保険の訪問看護を使っている方など)が、肺炎のあとや退院した直後に、一時的に毎日の訪問が必要になったときです。
1日に何度も訪問するときに、チームで決めること
- 1
必要な回数と時間帯を見積もる
訪問看護師が、たんの吸引、体位変換、経管栄養、排せつのケアなど、1日のどの時間に何が必要かを書き出します。訪問看護だけで担うのか、訪問介護や重度訪問介護、ご家族と分けるのかも一緒に考えます。
- 2
主治医に相談し、指示書に書いてもらう
1日の訪問回数とその理由を訪問看護指示書に書いてもらいます。一時的に頻回の訪問が必要なときは、診療のうえで特別訪問看護指示書を出してもらいます。
- 3
ステーションの体制を確かめる
1か所で回数をまかなえないときは、複数のステーションで分担します。別表7・別表8の方は2か所まで、そのうち週7日の訪問が計画されている方は3か所までです。ただし、同じ日に2か所のステーションがそれぞれ訪問看護療養費を算定することはできません(専門の研修を受けた看護師の同行訪問などの例外を除く)。分担の組み方は、ステーション同士と主治医で事前に決めておきます。
- 4
ケアマネジャーと共有する
医療保険の訪問看護は、介護保険の区分支給限度基準額には入りません。それでもケアプランには位置づけ、サービス担当者会議で共有します。特別指示の期間は介護保険の訪問看護から医療保険に切り替わるので、開始日と終了日を必ず伝えます。
- 5
期間の終わりを見越す
14日で状態が落ち着かないときは、早めに主治医と今後の方針を相談します。特別指示は月の回数に上限があるため、長く頻回の訪問が必要なら、療養の場所やサービスの組み方も含めて見直します。
東京都の在宅人工呼吸器使用難病患者訪問看護事業
東京都には、医療保険で定められた回数を超えて行う訪問看護の費用を都が負担する事業があります(2026年9月時点)。対象は、都内に住み、難病の医療費助成の対象の病気により在宅で人工呼吸器を使用していて、医師が1日3回以上の訪問看護が必要と認めた方です。
- 都が負担するのは、1日のうち3回目以降の訪問看護です(包括型訪問看護療養費を算定する場合は、90分以上かつ4回目以降)。
- 患者さんの自己負担はありません(申し込みの書類を取る費用は自己負担)。
- 上限は、患者さん1人につき年度で260回です。複数のステーションで行う場合も合わせて260回です。
- 申し込みは、お住まいの地域を管轄する保健所などです。主治医の訪問看護指示書の写し(1日3回以上の訪問看護が必要なことと、その理由の記載があるもの)などが要ります。
- 書類を出した月の翌月1日から、その年度の3月31日まで利用でき、翌年度は更新の手続きが要ります。
よくある思い違い
- 「特別指示が出れば、何か月でも毎日訪問できる」→ 特別指示は診療の日から14日以内で、原則として月1回です。
- 「要介護認定があるから、訪問看護は必ず介護保険」→ 別表7の病気の方と、特別指示の期間中の方は医療保険です。
- 「難病等複数回訪問加算は、難病の方だけ」→ 別表8の状態の方や、特別指示の期間中の方も対象です。
- 「2か所のステーションなら、同じ日にそれぞれ算定できる」→ 原則として、同じ日に2か所で訪問看護療養費は算定できません。
頻回の訪問に対応できるステーションを探すときは
1日に何度も訪問できる体制や、夜間・休日の対応は、訪問看護ステーションによって違います。Med-Tasuki(メドタスキ)では、東京都の訪問看護ステーションや訪問診療クリニックを地域ごとに探せます。医療機関・介護事業所の方は、一括依頼で近くの施設にまとめて受け入れを相談することもできます。
参考にした情報
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(訪問看護療養費の告示・留意事項通知の一覧)
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第74号)
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保発0305第19号)
- 厚生労働省「医科診療報酬点数表に関する事項」(令和8年度改定の留意事項。C007 訪問看護指示料)
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る訪問看護ステーションの基準等」
- 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等」別表第七・別表第八
- 東京都保健医療局 難病ポータルサイト「在宅人工呼吸器使用難病患者訪問看護事業」
監修者のプロフィール

Maekawa Hirotaka
脳神経内科専門医・頭痛専門医
地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者
脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。
Med-Tasukiを開発した理由を読む在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。