在宅の医療処置とケア

在宅酸素療法(HOT)を始める患者さんの在宅チーム

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対象:ケアマネジャー・訪問看護師・病院の退院支援看護師の方、ご家族

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)

この記事の監修

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

Med-Tasuki(メドタスキ)は、監修者が開発した、在宅医療・介護の施設どうしが患者さんの受け入れをチャットで相談できる無料のサービスです。近くの施設へまとめて相談できる一括依頼も使えます。

ひとことで言うと

在宅酸素は、医師が処方し、業者が機器を設置し、訪問看護が使い方と体調を見守る形で進みます。火気の禁止・停電への備え・外出用ボンベの管理を、退院前に家族と確かめておくことが大切です。

在宅酸素療法(HOT)は、COPD や間質性肺炎、心不全などで体の酸素が足りない方が、自宅で酸素を吸いながら暮らすための治療です。退院時に始まることが多く、機器・火気・停電・外出と、在宅チームで確かめることが多い処置でもあります。受け入れの流れと役割分担をまとめます。

01在宅酸素療法とは

在宅酸素療法は、病院で検査をして酸素が必要と判断された方に、医師が酸素の量(1分あたり何リットル)と使う時間(安静時・労作時・睡眠時)を処方し、自宅に酸素の機器を置いて行います。機器は「酸素濃縮器」(電気で空気から酸素を取り出す)が中心で、外出用に「携帯用酸素ボンベ」や「携帯型濃縮器」を組み合わせます。

医療保険

在宅酸素療法指導管理料

機器の費用も含めて医療機関が算定

火気厳禁

酸素の周りの2m

たばこ・ガスコンロ・ろうそく

停電

濃縮器は止まる

予備のボンベが命綱

在宅酸素療法の機器
機器使う場面注意点
酸素濃縮器自宅で日常的に電気が要る。停電で止まる
携帯用酸素ボンベ外出・停電時残量の確認。使い切ると空になる
携帯型酸素濃縮器外出が多い方電池の持ち時間
液体酸素高流量が必要な方など取り扱いの説明が要る

機器は医療機関が契約する業者が設置し、定期的に点検します。故障や停電のときの連絡先は業者です。

02在宅チームの役割分担

在宅酸素療法の在宅チーム
職種・事業所担うこと
処方する医師(病院・訪問診療)酸素の量・時間の処方、月ごとの管理料の算定、業者への機器の手配
機器業者設置・使い方の説明・定期点検・故障や停電時の対応
訪問看護酸素飽和度(SpO2)と呼吸の観察、機器の使い方の確認、火気・カニューレの管理、悪化のサインの早期発見
ケアマネジャー住環境(延長チューブの取り回し・転倒防止)、通所や外出時のボンベの扱い、家族の理解の確認
薬局吸入薬の使い方の指導、飲み薬との管理
訪問リハビリ息切れが少ない動き方、呼吸法、体力の維持

退院で在宅酸素が始まるときは、病院の主治医が処方して業者を手配し、退院後は訪問診療医またはかかりつけ医が管理を引き継ぎます。引き継ぎのときに「誰が処方して管理料を算定するか」を病院と診療所の間で決めておかないと、業者への指示が宙に浮きます。

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
在宅酸素を引き継ぐとき、私が最初に確かめるのは処方された量と時間だけではなく、「その方が実際に何リットルで、いつ使っているか」です。息が苦しいと自分で量を上げてしまう方がいて、それが病状を悪くすることもあります。訪問看護師さんの観察がここでは欠かせません。

03導入までの流れ

  1. 1

    病院で酸素の必要性を判断

    血液の酸素の検査や、歩いたときの酸素飽和度の検査で、処方の量と時間を決めます。

  2. 2

    業者が自宅に機器を設置

    退院の前日〜当日に設置し、ご本人・ご家族に使い方を説明します。退院前に自宅の電源とチューブの取り回しを確かめます。

  3. 3

    退院前カンファレンス

    訪問看護・ケアマネジャー・訪問診療医に、酸素の処方、悪化のサイン、緊急時の連絡先を共有します。

  4. 4

    在宅での見守り

    訪問看護が酸素飽和度と息切れの様子を記録し、変化があれば医師に連絡します。

  5. 5

    定期の見直し

    状態に合わせて医師が酸素の量を見直します。ご本人の判断で量を変えないよう、繰り返し伝えます。

04在宅で必ず確かめること

在宅酸素療法の安全チェック

  • 酸素の周り2m以内に火気がない(たばこ・ガスコンロ・仏壇のろうそく・ストーブ)。本人と家族の喫煙
  • 調理は電磁調理器(IH)にするか、調理中は酸素を外して離れる
  • 停電時の手順:携帯用ボンベに切り替える方法を家族が知っているか。ボンベの残量
  • 業者の緊急連絡先が電話の近くに貼ってあるか
  • 延長チューブでの転倒の危険がないか(家具の配置・夜間の動線)
  • 鼻のカニューレによる皮膚のただれ、乾燥
  • 外出(通所・受診)のときのボンベの持ち運びと残量の計算
  • 悪化のサインと連絡先:息切れの増え方、唇や爪の色、発熱、むくみ

酸素の量を勝手に変えない

COPD の方では、酸素を吸いすぎると呼吸の働きがかえって落ちることがあります(CO2 ナルコーシス)。苦しいからといって自分で量を増やさず、医師の処方どおりに使うことを、ご本人・ご家族・介護職に繰り返し伝えます。

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
火気の注意は「わかっています」と言われることが多いのですが、訪問すると仏壇のろうそくや石油ストーブが酸素のすぐそばにあることがあります。訪問看護師さんやケアマネジャーが家の中を見て気づいたことは、遠慮なく主治医にも伝えてください。

05外出・通所・受診のときの段取り

在宅酸素の方でも、通所リハビリや受診、買い物などの外出はできます。携帯用のボンベか携帯型濃縮器を使いますが、「何時間もつか」を計算しておかないと、外出先で酸素が切れます。

  • ボンベの持ち時間:ボンベの大きさと処方の流量で決まります。業者に「この流量で何時間か」を確かめ、往復の時間と滞在の時間に余裕を足します。
  • 同調器:吸うときだけ酸素を流す器具を使うと、ボンベが長くもちます。処方に合うかは医師と業者に確かめます。
  • 通所の事業所への連絡:酸素を使っていること、流量、緊急時の連絡先を事前に伝えます。送迎の車内でのボンベの固定も確かめます。
  • 受診:病院の外来では酸素を借りられることもあります。事前に病院に聞いておきます。
  • 旅行・帰省:業者に相談すると、旅行先での機器の貸し出しを手配できることがあります。

06よくある質問

  • 電気代はどれくらい?:酸素濃縮器は電気を使い続けます。電気代は自己負担です。自治体によっては助成があるので、市区町村の障害福祉の窓口に確かめます。
  • 停電が長引いたら?:ボンベの残量で持ちこたえる間に、業者・訪問看護・医師に連絡します。長引くなら、病院への一時的な入院や避難所の電源の利用を相談します。台風や計画停電の予報が出たら、前もってボンベを多めに用意してもらいます。
  • 在宅酸素があると介護保険の認定は上がる?:認定は日常生活の介助の量で決まるので、酸素だけで決まるものではありません。ただ、息切れで動作に時間がかかることは調査で伝えます。
  • 身体障害者手帳は取れる?:呼吸機能障害で手帳の対象になることがあります。手帳を取ると、電気代の助成や交通費の割引などが使える自治体もあります。主治医に相談します。

07訪問看護の観察の要点

在宅酸素の方の訪問看護で見ること
項目見方連絡の目安
酸素飽和度(SpO2)安静時と、動いた後に測る。普段の値を記録医師と決めた値を下回る、普段より明らかに低い
息切れ会話が続くか。日常の動作で休む回数普段より増えている
機器流量の設定が処方どおりか。チューブの折れ・水漏れ。フィルターの汚れ設定が変えられている、異音
皮膚鼻の下・耳の後ろのカニューレの跡、ただれ皮膚が破れている
生活火気の状況、停電への備え、ボンベの残量火気が近い、ボンベが空に近い

08受け入れ先に伝えること

在宅酸素の方の訪問看護や訪問診療を依頼するときは、酸素の処方(量・時間)、機器の種類、業者名、元の病気(COPD・間質性肺炎・心不全など)、外出の頻度を伝えると、受けられるかの判断が早くなります。在宅酸素は別表8に当てはまるので、医療保険の訪問看護では週4日以上の訪問ができます。

参考にした情報

監修者のプロフィール

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
前川 裕貴

Maekawa Hirotaka

脳神経内科専門医・頭痛専門医

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。

2012〜2018年順天堂大学 医学部 医学科
2018〜2020年東京逓信病院 初期臨床研修
2020〜2023年東京大学医学部附属病院 脳神経内科 特任臨床医
2023年〜埼玉精神神経センター 頭痛専門外来
荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
昭和医科大学 脳神経内科 客員講師
2025年〜株式会社Iris Wellness設立

在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。

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監修:前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医)/この記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。受け入れの状況や費用は各施設に、治療の判断は主治医にご相談ください。