ひとことで言うと
「指定難病だから医療保険」ではありません。決め手は、別表7に当たるか、要介護認定があるか、特別訪問看護指示書が出ているか、の3つです。
難病の方の訪問看護を組むとき、「医療保険と介護保険のどちらで入るのか」は最初に迷うところです。よくある誤解が「指定難病だから医療保険」というものですが、指定難病かどうかでは決まりません。
この記事では、2026年6月の改定にあわせて出された厚生労働省の通知で確かめた決まりをもとに、判断の流れと、病気ごとの例、迷いやすい場面をまとめます。
基本のルール:認定があれば介護保険が優先
要介護・要支援の認定を受けている方の訪問看護は、原則として介護保険で行います(介護保険の給付が医療保険に優先するため)。ただし、次の場合は、認定があっても医療保険の訪問看護になります。
- 「厚生労働大臣が定める疾病等」(別表7)に当たる方
- 急な状態の悪化などで、主治医が特別訪問看護指示書を出した期間(交付の日から14日以内)
- 精神科訪問看護を受ける方(認知症の方は除く)
- 入院中に、退院に向けて訪問看護を行う場合
一方、要介護・要支援の認定を受けていない方の訪問看護は、医療保険です。40歳未満の方、40〜64歳で特定疾病に当たらない方、65歳以上でも認定を受けていない方がこれに当たります。
なお、医療保険になるのは訪問看護だけです。認定を受けている方は、訪問介護・通所サービス・福祉用具など、訪問看護以外のサービスはこれまでどおり介護保険で使います。
判断の流れ
難病の方の訪問看護の保険は、次の順に確かめると整理できます。
- 1
別表7に当たるか
当たれば、年齢や認定の有無にかかわらず医療保険です。週4日以上や1日複数回の訪問、2か所のステーションの利用もできます。当たらなければ次へ。
- 2
要介護・要支援の認定を受けているか
受けていなければ医療保険です(原則として週3日まで)。受けていれば次へ。
- 3
認定がある場合は介護保険
介護保険の訪問看護として、ケアマネジャーのケアプランに組み込みます。
- 4
急に悪くなったときは特別訪問看護指示書
急な悪化などで頻回の訪問が必要なときは、主治医が特別訪問看護指示書を出すと、その期間(交付の日から14日以内)だけ医療保険の訪問看護になります。
特別訪問看護指示書は、原則として月1回、気管カニューレを使っている方と真皮を越える褥瘡のある方は月2回まで出せます(2026年9月時点)。指示の期間中は週4日以上の訪問ができ、週4日以上の訪問を計画している週は、2か所目の訪問看護ステーションも使えます。
別表7に当たるかは、病名だけで決めない
パーキンソン病は、ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上で、生活機能障害度がⅡ度またはⅢ度のときだけ別表7に当たります。また「人工呼吸器を使用している状態」は、病名を問わず別表7に当たります。主治医に状態を確認しましょう。
年齢で変わるところ:40〜64歳の特定疾病
介護保険を使えるのは、65歳以上の方と、40〜64歳で「特定疾病」(16の病気)が原因で介護が必要になった方です。40歳未満の方は介護保険の対象になりません。
神経難病のうち、特定疾病に入っているのは、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症・パーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症などです。一方、多発性硬化症、重症筋無力症、筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、ハンチントン病などは特定疾病に入っていません。
特定疾病に入っていない病気の40〜64歳の方は、介護保険が使えないため、訪問看護は医療保険、ホームヘルプなどの介護は障害福祉サービス(居宅介護・重度訪問介護など)で組み立てることになります。
病気ごとの例
訪問看護の保険について、神経難病の代表的な病気で整理すると次のようになります(2026年9月時点)。
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS):別表7に当たるため、訪問看護は医療保険です(年齢や認定の有無は問いません)
- 進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症・多系統萎縮症・脊髄小脳変性症:別表7に当たるため、訪問看護は医療保険です
- パーキンソン病:ステージ3以上かつ生活機能障害度Ⅱ度・Ⅲ度なら医療保険。それより軽い段階では、認定があれば介護保険、なければ医療保険です
- 多発性硬化症・重症筋無力症・筋ジストロフィー・慢性炎症性脱髄性多発神経炎など:別表7に当たるため、訪問看護は医療保険です
- 指定難病でも別表7に入っていない病気(例:後縦靱帯骨化症):認定があれば、訪問看護は介護保険が原則です
迷いやすい場面
- パーキンソン病が進んだとき:重症度が上がって別表7の条件を満たせば、訪問看護は医療保険になります。主治医と訪問看護ステーションで状態を確認し、ケアプランも見直します
- 在宅酸素や気管カニューレ、留置カテーテルなど(別表8)がある方:医療保険の訪問看護なら週4日以上の訪問ができますが、要介護認定がある方の訪問看護を医療保険にする例外にはなりません。別表7に当たらなければ、訪問看護は介護保険が原則です
- 特別訪問看護指示書が出たとき:医療保険になるのは指示の期間だけで、終われば介護保険の訪問看護に戻ります
- 65歳になったとき:原因を問わず介護保険の対象になります。別表7に当たる病気なら訪問看護は医療保険のままですが、それまで障害福祉で使っていたホームヘルプなどは、似たサービスが介護保険にあれば介護保険が原則優先になるため、区市町村・ケアマネジャー・相談支援専門員で早めに調整します
- 認定を受けずに医療保険の訪問看護だけを使っている方:ホームヘルプや福祉用具など、ほかのサービスが必要になりそうなら、早めに要介護認定の申請を考えます
- ケアプランでの扱い:医療保険の訪問看護は介護保険の給付ではないため、介護保険の支給限度額の枠は使いません。それでも訪問の予定はケアプランに書き込み、チームで共有しておくと調整しやすくなります
自己負担と難病医療費助成
医療保険の訪問看護は医療保険の自己負担割合、介護保険の訪問看護は介護保険の自己負担割合で支払います。難病医療費助成(指定難病の医療受給者証)を持っている方は、認定された病気のための訪問看護であれば、医療保険・介護保険のどちらでも助成の対象になり、自己負担はひと月の上限額までになります。ただし、助成を受けられるのは、都道府県・指定都市から指定を受けた訪問看護ステーション(指定医療機関)の訪問看護です。
最初に確かめること(チェックリスト)
- 1
病名と状態
主治医の訪問看護指示書や診療情報提供書で、病名、パーキンソン病なら重症度、人工呼吸器を使っているかを確かめます。
- 2
年齢と介護保険の認定
介護保険の被保険者証で、認定の有無と要介護度、有効期間を確かめます。40〜64歳の方は、原因の病気が特定疾病に入っているかも確認します。
- 3
難病の医療受給者証
持っているか、訪問看護ステーションが難病の指定医療機関になっているかを確かめます。
- 4
必要な訪問の量
週の日数、1日の回数、夜間の対応が必要かを見積もり、1か所で足りるかを考えます。
- 5
チームで共有
どの保険で訪問看護に入るかを、主治医・ケアマネジャー・訪問看護ステーションの間で共有しておきます。
受け入れ先を探すときは
保険の種類が決まったら、訪問看護ステーションを探します。Med-Tasukiの一括依頼を使うと、患者さんの住所(町名まで)と、医療保険か介護保険か、必要な訪問の頻度などの条件を入れて、近くのステーションへまとめて相談できます。
参考にした情報
- 厚生労働省「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正(令和8年3月27日)
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保発0305第19号)
- 近畿厚生局「よくある質問(訪問看護療養費の算定について)」令和8年6月1日~適用分
- 近畿厚生局「医療保険の訪問看護について」
- 東京都保健医療局 難病ポータルサイト「難病患者さんが利用できる介護保険サービス」(特定疾病)
- 東京都保健医療局 難病ポータルサイト「難病医療費助成の助成内容」
- 厚生労働省「障害福祉サービスと介護保険サービスとの関係」
監修者のプロフィール

Maekawa Hirotaka
脳神経内科専門医・頭痛専門医
地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者
脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。
Med-Tasukiを開発した理由を読む在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。