神経難病|制度とお金

難病医療費助成と在宅サービス:訪問看護・訪問診療の自己負担

公開|内容の確認:

対象:ケアマネジャー・訪問看護師・病院の MSW・訪問診療医の方、ご家族

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)

この記事の監修

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

Med-Tasuki(メドタスキ)は、監修者が開発した、在宅医療・介護の施設どうしが患者さんの受け入れをチャットで相談できる無料のサービスです。近くの施設へまとめて相談できる一括依頼も使えます。

ひとことで言うと

指定難病の医療受給者証があると、訪問診療・訪問看護・薬局に加え、介護保険の訪問看護なども、自己負担がひと月の上限額までになります。訪問介護は対象外です。

神経難病の方の在宅療養では、訪問診療、訪問看護、薬局、訪問リハビリなど、ひと月に何か所もの事業所が関わります。指定難病の医療費助成(難病医療費助成)を受けている方は、こうした在宅サービスの自己負担にも上限があります。

この記事では、助成のしくみと、在宅サービスのうち何が対象になり何が対象にならないか、在宅チームが気をつけたい手続きをまとめます。金額は2026年9月時点で難病情報センターなどの公的な情報で確かめたものです。

01難病医療費助成のしくみ

2割

医療費の自己負担

もともと1割負担の方は1割。さらに、所得に応じたひと月の上限額があります

原則1年以内

受給者証の有効期間

続けて助成を受けるには、毎年の更新申請が要ります

2〜3か月ほど

審査にかかる期間

  • 対象:指定難病(2026年4月時点で348疾病)と診断され、病気ごとの重症度分類で一定以上の方。重症度を満たさなくても、医療費の総額(10割)が33,330円を超える月が年3回以上ある方も対象になります(軽症高額該当)
  • 申請:難病指定医が書いた臨床調査個人票(診断書)などを、都道府県・指定都市の窓口に出します。東京都は、お住まいの区市町村の窓口です
  • 認定されると「特定医療費(指定難病)受給者証」(医療受給者証)が交付されます
  • 助成の開始:重症度を満たすと診断された日から。ただし、さかのぼれるのは原則として申請日から1か月まで(やむを得ない理由があれば最長3か月)

東京都には、国の指定難病のほかに都が独自に助成の対象にしている病気もあります。対象かどうかは区市町村の窓口で確認してください。

02ひと月の自己負担の上限額(2026年9月時点)

上限額は、世帯の住民税などで決まる「階層」ごとに決まっています。外来・入院・在宅の区別なく、ひと月の合計に適用されます。

階層ごとのひと月の上限額(2026年9月時点)
  • 生活保護0円
  • 低所得Ⅰ2,500円
  • 低所得Ⅱ5,000円
  • 一般所得Ⅰ10,000円
  • 一般所得Ⅱ20,000円
  • 上位所得30,000円
  • 人工呼吸器等装着者1,000円

低所得Ⅰは住民税非課税で本人の年収が低い方、低所得Ⅱは住民税非課税の方です。「高額かつ長期」の方は、一般所得Ⅰが5,000円、一般所得Ⅱが10,000円、上位所得が20,000円になります。人工呼吸器等装着者は所得にかかわらず1,000円です(生活保護の方は0円)。

例えば一般所得Ⅰ(上限1万円)の方で、ひと月の医療費が10万円なら、ふつうの3割負担では3万円のところ、窓口での負担は上限の1万円までになります。医療費が4万円の月は、医療費の2割(8,000円)が上限額より少ないため、8,000円を支払います。

「高額かつ長期」は、指定難病の医療費の総額(10割)が5万円を超える月が、申請する月以前の12か月に6回以上ある方です。「人工呼吸器等装着者」は、認定された指定難病のために常に人工呼吸器などの生命を維持する装置を着ける必要があり、日常生活動作が著しく制限されている方で、気管切開やマスクを介して人工呼吸器を着けている神経難病の方などが想定されています。

状態が変わったら上限額の変更を

人工呼吸器を着けることになった、医療費がかさむようになったなど、状態が変わると上限額が下がる場合があります。有効期間の途中でも、上限額の変更の申請ができます。訪問看護師やケアマネジャーが気づいたら、ご本人・ご家族に窓口への相談をすすめてください。

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
診断書を書く医師からは、ご本人がひと月にどれだけ払っているかが見えにくいものです。訪問のなかで支払いが重そうだと気づいたら、主治医にも一言伝えてください。上限額の見直しの相談につなげやすくなります。

03在宅サービスで助成の対象になるもの・ならないもの

難病医療費助成は、医療保険や介護保険の給付を先に使い、そのうえで残る自己負担を軽くするしくみです(保険優先)。助成の対象は、認定された病気(とそれに伴う病気)のための医療です。在宅サービスでは、次のように分かれます。

在宅サービスと難病医療費助成
区分助成の対象対象外
医療保険のサービス訪問診療・往診などの診療、薬局の調剤、訪問看護入院したときの食事代
介護保険のサービス訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導(それぞれの介護予防サービスも)、介護医療院サービス訪問介護(ホームヘルプ)、通所介護、支給限度額を超えて使った分(全額が自己負担)
そのほか保険がきかない治療、差額ベッド代、交通費、補装具の費用

同じ介護保険のサービスでも、医療系のサービスかどうかで分かれます。ケアプランで費用の見込みを説明するときは、この区別を意識しておくと、ご本人・ご家族の誤解を防げます。

04指定医療機関であることを確かめる

助成を受けられるのは、原則として都道府県・指定都市から指定を受けた「指定医療機関」で受けた医療に限られます。指定医療機関には、病院・診療所だけでなく、薬局や訪問看護ステーションなども含まれます。

在宅チームに新しく訪問診療クリニックや訪問看護ステーション、薬局が加わるときは、その事業所が難病の指定医療機関になっているかを確かめておきましょう。指定を受けていない事業所の分は、助成が受けられません。各都道府県・指定都市の指定医療機関は、難病情報センターのページから調べられます。

05上限額管理票は「家に置いてみんなで書く」

ひと月の上限額は、受診したすべての指定医療機関の自己負担を合わせて適用されます。そのため、医療受給者証と一緒に交付される「自己負担上限額管理票」で、その月にいくら払ったかを管理します。

  1. 1

    受診・訪問のたびに記入してもらう

    指定医療機関は、上限額の範囲で自己負担を受け取り、その額を管理票に書き込みます。在宅では、訪問診療・訪問看護・薬局がそれぞれ書き込むことになります。

  2. 2

    上限に達したら、その月はそれ以上払わない

    合計が上限額に達したら、そのときの指定医療機関が確かめ、その月はそれ以上の自己負担を受け取りません。

  3. 3

    すぐ出せる場所に置く

    管理票が見当たらないと、各事業所が記入できません。医療受給者証とあわせて、訪問のときにすぐ出せる場所に置いておくよう、ご家族と決めておくと安心です。

06申請・更新で在宅チームが手伝えること

ご本人・ご家族に伝えること、チームで確かめること

  • まだ申請していない方には、主治医(難病指定医)に臨床調査個人票を書いてもらえるか確認するよう伝える。新規申請の診断書を書けるのは「難病指定医」で、「協力難病指定医」は更新の診断書だけを書けます
  • 受給者証が届くまでの間に指定医療機関で支払った医療費は、あとから払い戻しを請求できるので、領収書をとっておくよう伝える
  • 重症度を満たさない方でも、医療費の多い月が続いていれば軽症高額該当で対象になることがあるので、主治医や窓口に相談するよう伝える
  • 有効期間が切れると助成が止まるので、更新の時期をケアマネジャーや訪問看護師も把握しておく
  • 有効期間の途中で申請した内容や上限額の計算に関わることが変わったときは、届出が必要。指定医療機関・上限額・指定難病の名称を変える必要があるときは、変更の申請ができる。在宅チームに新しい事業所が加わるときは、窓口に手続きが要るか確かめる
  • 医療費助成の対象にならない方にも、指定難病の患者であることを示す「指定難病登録者証」が交付され、福祉や就労の支援を受けるときに使えることを伝える(原則としてマイナンバーカードが登録者証になる)
前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
臨床調査個人票を書くときは、診断の根拠になる検査や経過をまとめる必要があります。更新の時期を早めに教えてもらえると、外来や訪問のなかで準備の時間をとれるので、医師も助かります。

07在宅チームを組むときに

Med-Tasukiの一括依頼では、患者さんの住所(町名まで)と条件を入れて、近くの訪問看護ステーションや訪問診療クリニック、薬局へまとめて受け入れを相談できます。難病の指定医療機関かどうかは、引き受けた施設とのチャットで確かめられます。

参考にした情報

監修者のプロフィール

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
前川 裕貴

Maekawa Hirotaka

脳神経内科専門医・頭痛専門医

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。

2012〜2018年順天堂大学 医学部 医学科
2018〜2020年東京逓信病院 初期臨床研修
2020〜2023年東京大学医学部附属病院 脳神経内科 特任臨床医
2023年〜埼玉精神神経センター 頭痛専門外来
荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
昭和医科大学 脳神経内科 客員講師
2025年〜株式会社Iris Wellness設立

在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。

Med-Tasukiを開発した理由を読む

医療機関・介護事業所の方へ

受け入れの相談を、電話とFAXからチャットへ

Med-Tasuki(メドタスキ)は、在宅医療・介護の施設どうしが患者さんの受け入れをチャットで相談できる無料のサービスです。近くの施設へまとめて相談できる一括依頼も使えます。

監修:前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医)/この記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。受け入れの状況や費用は各施設に、治療の判断は主治医にご相談ください。