神経難病|制度とお金

神経難病と障害福祉サービス|重度訪問介護と介護保険の併用、40歳・65歳で切り替わるときの注意

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対象:ケアマネジャー・相談支援専門員・病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)・訪問看護師の方

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)

この記事の監修

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

Med-Tasuki(メドタスキ)は、監修者が開発した、在宅医療・介護の施設どうしが患者さんの受け入れをチャットで相談できる無料のサービスです。近くの施設へまとめて相談できる一括依頼も使えます。

ひとことで言うと

介護保険が優先ですが、支給限度額で足りない分や介護保険にない支援は、重度訪問介護などの障害福祉サービスを併せて使えます。判断は市区町村が個別に行います。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)や筋ジストロフィーなどの神経難病が進むと、たんの吸引や体位変換、見守りが長い時間必要になり、介護保険のサービスだけでは足りなくなることがあります。そのとき支えになるのが、障害者総合支援法の障害福祉サービスです。この記事では、介護保険と障害福祉サービスの関係、重度訪問介護の対象、併用するときのチームの動き方をまとめます。

01難病の方も、障害福祉サービスの対象

障害福祉サービスは、2013年4月から難病等の方も対象になりました。対象の病気は見直しが続いており、2025年4月からは376の病気が対象です(2026年9月時点で最新)。指定難病のほか、障害者総合支援法だけの対象の病気もあります。

  • 申請は、対象の病気にかかっていることがわかる証明書(診断書など)を持って、お住まいの市区町村の窓口で行います。
  • 指定難病の登録者証などを持っていない方でも、障害者総合支援法だけの対象の病気の方は利用できます。
  • ホームヘルプ(居宅介護)、重度訪問介護、短期入所(ショートステイ)などの介護給付は、障害支援区分の認定を受けてから利用します。
介護保険と障害福祉サービスのちがい
項目介護保険障害福祉サービス
使える人65歳以上の方と、40〜64歳で特定疾病(ALS、パーキンソン病関連疾患、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症など)の方対象の376の病気の方など。障害者手帳(身体障害者手帳など)がなくても、必要と認められた支援を受けられる
認定要介護認定障害支援区分(非該当・区分1〜6)
計画をつくる人ケアマネジャー(ケアプラン)相談支援専門員(サービス等利用計画)
相談の窓口市区町村の介護保険の窓口、地域包括支援センター市区町村の障害福祉の窓口、相談支援事業所

同じようなサービスが両方にあるときは、基本的に介護保険が先です(次の見出し)。

02介護保険と障害福祉、どちらが先?

障害者総合支援法には「ほかの法律による給付が優先する」という決まり(第7条)があり、介護保険に同じようなサービスがあれば、基本的には介護保険を先に使います。ただし厚生労働省の通知では、介護保険を一律に優先させるのではなく、市区町村が本人の利用の意向を聞き取ったうえで、必要な支援を介護保険で受けられるかを個別に判断するとしています。流れにすると次のとおりです。

介護保険を使える方が、障害福祉サービスも使えるか(判断は市区町村が個別に行います)
  1. Q1.介護保険に相当するものがない、障害福祉だけのサービス(同行援護、行動援護、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援など)を使いたいですか
    はい
    障害福祉サービスを使えます
    いいえ
  2. Q2.要介護認定で非該当になったなど、介護保険のサービスを使えない状態ですか
    はい
    障害福祉サービスを使えます
    いいえ
  3. Q3.区分支給限度基準額の制約で、市区町村が必要と認める量を、介護保険のサービスだけではまかなえない状態ですか
    はい
    足りない分を、居宅介護や重度訪問介護などで併せて使えます
    いいえ
  4. Q4.介護保険の訪問介護では対象にならない支援の内容や時間(日常生活に生じるさまざまな介護の事態に対応するための見守りなど)が必要ですか
    はい
    別に居宅介護や重度訪問介護で認める運用の例が、2023年6月の厚生労働省の事務連絡に挙げられています
    いいえ
  5. Q5.使える介護保険の事業所が身近にない、あっても空きがない状態ですか
    はい
    その事情が解消するまで、障害福祉サービスを併せて使えます
    いいえ
介護保険のサービスを先に使います

2023年6月の事務連絡では、「要介護5以上かつ障害支援区分4以上」のような画一的な基準だけで判断するのは適切ではないとしています。

「介護保険だけ」と思い込まない

同じ事務連絡では、介護保険が優先されることが「介護保険しか使えない」という誤解につながらないよう、併給できることを利用者や関係者に案内するよう市区町村に求めています。運用は市区町村によって違うことがあるので、必要な支援の内容と時間を具体的に示して、早めに窓口に相談しましょう。

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
介護保険で足りないと感じたら、どの時間帯に、どんな手が足りないのかを具体的に書き出してみてください。足りない中身が見えると、私たち医療の側も、どんな見守りやケアが必要なのかを一緒に考えやすくなります。

03重度訪問介護とは

重度訪問介護は、重い肢体不自由などで常に介護が必要な方の自宅で、入浴・排せつ・食事などの介護、家事、外出時の移動の介護などを、長い時間にわたって総合的に行うサービスです。日常生活に生じるさまざまな介護の事態に対応するための見守りも含みます。ALSなどで、一日の多くの時間に人の手が必要な方の在宅療養を支える柱の一つです。

  • 対象:障害支援区分4以上で、次のどちらかに当たる方。(1) 二肢以上に麻痺などがあり、認定調査の「歩行」「移乗」「排尿」「排便」がいずれも「支援が不要」以外と認定されている方、(2) 行動関連項目等(12項目)の合計が10点以上の方
  • 入院中の利用:障害支援区分4以上で、入院する前から重度訪問介護を使っていた方は、入院中も、意思疎通の支援などに使えます。ふだんのヘルパーが病院のスタッフに本人の意思の伝え方を橋渡しできます
  • たんの吸引・経管栄養:研修を受けて登録された介護職員などは、医師の指示のもとで、口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部のたんの吸引と、胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養を行えます。重度訪問介護の場(移動中や外出先を含む)も対象です

04使い始めるまでの流れ

  1. 1

    市区町村の障害福祉の窓口に相談する

    介護保険を使っている方は、ケアマネジャーが一緒に相談に入ると、介護保険で足りない部分を具体的に伝えやすくなります。

  2. 2

    障害支援区分の認定を受ける

    認定調査員による80項目の調査と、主治医の医師意見書をもとに、コンピュータによる一次判定と市町村審査会による二次判定を経て、非該当・区分1〜6のいずれかが決まります。

  3. 3

    サービス等利用計画をつくる

    相談支援事業所の相談支援専門員が、本人の希望や生活の状況を聞いて計画をつくります。介護保険のケアプランとの重なりや、分担を整理します。

  4. 4

    支給決定を受け、事業所と契約する

    市区町村が支給量を決めます。重度訪問介護の事業所と契約し、ヘルパーの体制(時間帯、たんの吸引ができるか)を確かめてから始めます。

症状に波がある方の認定調査

厚生労働省の難病患者等向けの障害支援区分認定マニュアルでは、症状が変動する方は、調査の日が軽い状態であっても「できたりできなかったりする場合のできない状況(最も支援が必要な状況)」で判断し、変動の様子を特記事項に書くことになっています。医師意見書でも、症状の変動がわかるように書くことが求められています。夜間の吸引の回数など、状態の悪いときの様子を具体的に伝えましょう。

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
医師意見書では、症状の波や夜間の様子が伝わるかどうかが大事だと考えています。夜の吸引の頻度や、調子の悪い時間帯の様子を、ケアマネさんや訪問看護師さんからメモで伝えてもらえると、私たちも実際に近い意見書を書けます。

05介護保険と併せて使うときの、チームの動き方

  • ケアマネジャーと相談支援専門員が情報を共有する:サービス担当者会議に相談支援専門員も参加し、介護保険と障害福祉の分担を一枚の絵にします。
  • ケアプランに障害福祉サービスも位置づける:介護保険の対象外のサービスも含めて、暮らし全体を支える計画にします。
  • 介護保険をどう使ったかを示せるようにする:支給限度額をどのサービスに使い、どこが足りないのかを記録しておくと、障害福祉サービスの支給量の相談がしやすくなります。
  • 訪問看護の保険を確かめる:ALSなど別表7の病気の方の訪問看護は医療保険です。訪問看護と重度訪問介護の時間帯を合わせて、一日の支援の切れ目をなくします。
  • 家族の休息の計画も入れる:短期入所(医療型はALSなどの運動ニューロン疾患の方も対象)や、自治体の難病の事業も検討します。

0640歳・65歳で切り替わるときの注意

障害福祉サービスを使っている方が65歳になるとき、また特定疾病の方が40歳になるときは、介護保険を使えるようになります。介護保険に移っても、必要な支援が一律に打ち切られるわけではなく、上の流れ図に当たる場合は、障害福祉サービスを引き続き併せて使えます。暮らしが急に変わらないよう、前もって準備します。

65歳(特定疾病の方は40歳)になる前に確かめること

  • 要介護認定を申請したか:65歳(特定疾病の方は40歳)になる日(誕生日の前日)の3か月前から受け付け、その日に認定することができる運用です。市区町村からの案内を待たずに相談します
  • 共生型サービスか:いまの障害福祉の事業所が介護保険の指定も受けていれば、それまでと同じ事業所の支援を続けやすくなります
  • 新高額障害福祉サービス等給付費に当たるか:長く障害福祉サービスを使ってきた方が、65歳で介護保険に移ったあとの自己負担を軽くする仕組みです(所得などの条件があります)
  • 引き継ぎをしたか:相談支援専門員から、本人の了解を得てケアマネジャーに、状態やサービスの利用状況を引き継ぎます
  • 移ったあとも情報を共有するか:サービス担当者会議に相談支援専門員が参加するなどして、情報を共有します

07相談先と、事業所を探すときは

制度ごとの相談の窓口は、上の「介護保険と障害福祉サービスのちがい」の表のとおりです。難病の療養の相談は保健所が窓口です。重度訪問介護やたんの吸引に対応できるヘルパーの体制は、事業所によって大きく違います。Med-Tasuki(メドタスキ)では、東京都の訪問介護事業所や居宅介護支援事業所を地域ごとに探せます。医療機関・介護事業所の方は、一括依頼で近くの施設にまとめて相談することもできます。

参考にした情報

監修者のプロフィール

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
前川 裕貴

Maekawa Hirotaka

脳神経内科専門医・頭痛専門医

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。

2012〜2018年順天堂大学 医学部 医学科
2018〜2020年東京逓信病院 初期臨床研修
2020〜2023年東京大学医学部附属病院 脳神経内科 特任臨床医
2023年〜埼玉精神神経センター 頭痛専門外来
荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
昭和医科大学 脳神経内科 客員講師
2025年〜株式会社Iris Wellness設立

在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。

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監修:前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医)/この記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。受け入れの状況や費用は各施設に、治療の判断は主治医にご相談ください。