ひとことで言うと
介護保険は市区町村に申請し、認定調査と主治医意見書をもとに、要支援1〜2・要介護1〜5のどれかに認定されます。申請から結果まで原則30日で、結果を待たずにサービスを使い始めることもできます。状態が変わったら「区分変更」を申請します。
介護保険のサービスを使うには、まず市区町村に申請して「要介護認定」を受ける必要があります。申請から結果まで1か月ほどかかるため、退院や病状の変化のときは「いつ申請するか」が支援の速さを決めます。流れと期間、状態が変わったときの手続きをまとめます。
01誰が申請できるか
| 年齢 | 対象 | 条件 |
|---|---|---|
| 65歳以上(第1号被保険者) | 原因を問わず | 介護や支援が必要な状態 |
| 40〜64歳(第2号被保険者) | 16の特定疾病が原因の場合だけ | がん(末期)・脳血管疾患・パーキンソン病関連・ALS・関節リウマチ・初老期認知症 など |
| 39歳以下 | 対象外 | 障害福祉サービスや医療保険を使う |
特定疾病の一覧は「介護保険の特定疾病16と神経難病」の記事にまとめています。
原則30日
申請から結果まで
遅れることもある
申請日から
認定の効力
結果を待たずにサービスを使える
区分変更
状態が変わったら
有効期間の途中でも申請できる
02申請から認定までの流れ
- 1
申請
市区町村の介護保険の窓口(または地域包括支援センター)に申請書を出します。本人・家族のほか、地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・病院の MSW が代行できます。介護保険被保険者証(65歳以上)または医療保険の保険証(40〜64歳)が要ります。
- 2
認定調査
市区町村の調査員が自宅や病院を訪ね、体の動き・認知・生活の状況を74項目で聞き取ります。普段の様子を家族やケアマネジャーが同席して伝えます。
- 3
主治医意見書
市区町村が主治医に依頼し、病状・認知・処置・介護の必要性を医師が書きます。かかりつけ医がいない方は、市区町村が指定する医師の診察を受けます。
- 4
一次判定と介護認定審査会
調査の結果をコンピュータで判定(一次判定)し、保健・医療・福祉の専門家の審査会が意見書と合わせて最終的に判定します。
- 5
結果の通知
要支援1〜2、要介護1〜5、または非該当の結果が郵送されます。申請から原則30日以内。
- 6
ケアプランの作成
要介護なら居宅介護支援事業所のケアマネジャー、要支援なら地域包括支援センターがケアプランを作り、サービスが始まります。

主治医意見書は、審査会が「この人にどれだけ介護が要るか」を判断する大きな材料です。私は書くときに、診察室で見える姿だけでなく、ご家族やケアマネジャーから聞いた夜間の様子や介護の手間を必ず書き込みます。申請の前に「困っていること」を主治医に伝えておいてもらえると、意見書がその人の実態に近づきます。
03認定を待たずにサービスを使う
認定の効力は申請した日にさかのぼります。そのため、結果が出る前でも、見込みの要介護度でケアプラン(暫定ケアプラン)を作ってサービスを使い始められます。退院直後や急な病状の変化のときは、この仕組みが支えになります。
暫定利用の注意
結果が見込みより低かった場合、使った分が支給限度額を超えて全額自己負担になることがあります。非該当になると、使った分がすべて自己負担になります。暫定で使うときは、控えめの見込みで組むか、確実に必要なサービス(ベッド・訪問看護など)から入れます。詳しくは「認定前に介護サービスを使う」の記事にまとめています。
04認定調査で伝えること
認定調査に同席するときに伝えること
- 調査のときにしっかり振る舞っても、普段は違うこと(認知症の方は特に)
- 夜間の様子(トイレの回数・徘徊・不眠)
- 介護に実際にかかっている手間と時間(着替えに何分、入浴は何人がかり)
- 転倒の回数、危ないと感じる場面
- 服薬・金銭・火の元の管理を自分でできているか
- 医療処置(酸素・カテーテル・褥瘡・点滴 など)
- 家族が介護のために仕事を休んでいる、介護者の体調が悪い、といった状況
認定調査は「できるか・できないか」を聞きますが、「できるけれど時間がかかる」「見守りが要る」ことも介護の手間です。調査員に具体的に伝えると、実態に合った認定になりやすくなります。
05認定の有効期間と更新・区分変更
| 手続き | いつ | 有効期間の目安 |
|---|---|---|
| 新規の認定 | 初めて申請したとき | 原則6か月(3〜12か月の範囲で決まる) |
| 更新 | 有効期間が切れる60日前から申請できる | 原則12か月(状態が安定していれば最長48か月まで延びることがある) |
| 区分変更 | 状態が変わったとき、有効期間の途中でも | 新しい認定から原則6か月 |
更新の申請を忘れると、期限が切れた日からサービスを使えなくなります。ケアマネジャーが期限を管理しますが、家族も把握しておきます。
- Q1.状態が悪くなり、今の区分の限度額ではサービスが足りないはい区分変更を申請する(認定調査と意見書をやり直す)いいえ
- Q2.入院して退院後の状態が入院前と大きく違うはい退院前に区分変更を申請しておく(暫定で退院後のサービスを組む)いいえ
- Q3.状態はよくなったが、区分が高いままで困っていないはい更新のときに見直せばよい(区分が下がると限度額が減る)いいえ

「区分変更」という言葉を知らないご家族は多く、状態が悪くなっているのに次の更新まで我慢していることがあります。訪問診療で「介護が大変になってきた」と聞いたら、私からケアマネジャーに区分変更の相談を提案するようにしています。意見書は喜んで書きます。
06よくある質問
- 入院中に申請できる?:できます。認定調査は病院で受けられ、主治医意見書は病院の主治医が書きます。退院後の暮らしに介護が要りそうなら、退院を待たずに申請します。
- 結果に納得できない:市区町村に相談し、状態が反映されていなければ区分変更の申請ができます。都道府県の介護保険審査会への不服申し立ての仕組みもあります。
- 非該当(自立)と言われた:市区町村の総合事業(介護予防・日常生活支援)のサービスを使えることがあります。地域包括支援センターに相談します。
- 40〜64歳で特定疾病に当たらない病気は?:介護保険は使えません。障害福祉サービス(障害者総合支援法)や医療保険の訪問看護などを検討します。
- 申請してから調査までどれくらい?:市区町村や時期によりますが、1〜2週間ほどが多いです。急ぐ事情(退院が近い)は申請のときに伝えます。
07主治医意見書を頼むときのコツ
主治医意見書は、市区町村から主治医に直接依頼されますが、ご家族やケアマネジャーが主治医に「介護で困っていること」を伝えておくと、意見書に実態が反映されます。診察室では元気に見える方ほど、この一手が大切です。
- 申請する前に、主治医の診察のときに「介護保険を申請します。意見書をお願いします」と伝える
- 困っていること(夜間の介護、転倒、服薬の管理、認知症の症状)をメモにして渡す
- 医療処置や通院の付き添いの負担も伝える
- かかりつけ医が複数いる場合は、介護の状況を一番よく知る医師に頼む(申請書に記載する)
- 主治医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診察を受ける
08受け入れ先の探し方
認定を受けたらケアマネジャーを決めます。Med-Tasuki(メドタスキ)では、居宅介護支援事業所を地域ごとに探せます。医療機関・介護事業所の方は、一括依頼で近くの事業所にまとめて相談できます。
参考にした情報
監修者のプロフィール

Maekawa Hirotaka
脳神経内科専門医・頭痛専門医
地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者
脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。
Med-Tasukiを開発した理由を読む在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。