ひとことで言うと
介護保険は申請した日から効力があるので、認定の結果を待たずに「暫定ケアプラン」でサービスを始められます。ただし、見込みより低い区分になると使った分が自己負担になることがあるため、確実に要るサービスから入れ、退院直後の空白を作らないように組みます。
退院が1週間後に決まったのに、介護保険の認定結果は1か月先。こういうとき、ベッドや訪問介護を「認定が出るまで使えない」と考える必要はありません。申請した日から介護保険は効力を持ち、ケアマネジャーが見込みの区分で「暫定ケアプラン」を作ればサービスを始められます。仕組みと注意点をまとめます。
01暫定ケアプランの仕組み
要介護認定の効力は申請日にさかのぼります。そのため、申請してから結果が出るまでの間も、「おそらく要介護2くらい」という見込みでケアプランを作り、サービスを使うことができます。これを暫定ケアプランと呼びます。結果が出たら、その区分に合わせて正式なケアプランに直します。
申請日から
介護保険の効力
結果を待たなくてよい
見込み
暫定の区分
ケアマネが状態から判断
自己負担の危険
見込みより低い結果
限度額を超えた分
| 結果 | 扱い |
|---|---|
| 見込みどおり・より高い区分 | そのまま正式なケアプランに。使った分は保険で給付される |
| 見込みより低い区分 | 使った分がその区分の限度額を超えていれば、超えた分は全額自己負担になる |
| 非該当(自立) | 使った分は全額自己負担。総合事業のサービスに切り替えを検討 |
| 要支援(要介護の見込みで組んでいた場合) | 担当が地域包括支援センターに移る。使えるサービスの種類も変わる(福祉用具の一部など) |

退院直後の1週間は、ご家族が一番心細く、患者さんの状態も動く時期です。認定を待って「何もない1週間」を作るより、暫定でベッドと訪問看護だけでも入れておくほうが、再入院を防げると感じています。主治医意見書は、暫定の見込みを立てる材料にもなるので、早めに書くようにしています。
02見込みの区分をどう立てるか
- 病院の情報を集める:日常生活の動作(食事・排泄・移動・入浴)、認知の状態、医療処置、リハビリの見通しを病棟看護師・MSW から聞きます。
- 主治医意見書の内容を確かめる:意見書に書かれた「介護の必要性」は審査会の判断に大きく影響します。主治医と見込みをすり合わせます。
- 控えめに見積もる:迷ったら1つ低い区分で組みます。上振れすれば正式なプランで増やせますが、下振れは自己負担になります。
- 入院前の認定があれば区分変更で:以前の認定がある方は、区分変更の申請をして、新しい結果が出るまで前の区分の限度額で組みます。
- Q1.退院直後に医療処置や状態の観察が要るはい訪問看護を最優先。医療保険で使える条件(別表7・8、特別指示書)があれば介護保険の枠を使わないいいえ
- Q2.ベッドから起き上がれない・寝返りに介助が要るはい介護ベッドと体圧分散マットレスのレンタル(軽度者は例外の手続きを確かめる)いいえ
- Q3.家族が日中いない・食事や排泄に介助が要るはい訪問介護を必要な時間帯に。控えめの回数で始めて調整いいえ
- Q4.入浴が自宅で難しいはい訪問入浴か通所の入浴。退院後1〜2週間は無理をしないいいえ
03退院直後の優先順位
退院直後の1週間に「空白」を作らないための確認
- 退院日:ベッド・マットレス・車いすが搬入されているか(前日までに)
- 退院日〜翌日:訪問看護の初回訪問(医療保険の条件があれば当日も可能)
- 退院翌日〜3日以内:訪問診療の初回訪問(または、かかりつけ医の訪問)
- 毎日:訪問介護の時間帯(食事・排泄・服薬の確認)。家族が担う部分を明確に
- 薬:退院時処方の日数と、次の処方までの薬局の手配
- 緊急時の連絡先の紙を、電話の横に貼ってあるか
- 1週間後:ケアマネジャーの訪問で、暫定プランの過不足を見直す
医療保険で補える部分を先に確かめる
訪問看護は、別表7の病気(末期がん・神経難病など)・別表8の状態(在宅酸素・カテーテル・褥瘡など)・特別訪問看護指示書の期間なら医療保険で行え、介護保険の限度額を使いません。訪問診療・訪問薬剤管理指導も医療保険です。暫定で介護保険の枠を使い切らないよう、医療保険で賄える部分を先に整理します。

退院直後に頻回の訪問看護が要る方には、私は特別訪問看護指示書を退院時に出すことがあります。14日間は医療保険で毎日訪問できるので、暫定ケアプランの限度額を気にせず、退院後の一番不安定な時期を支えられます。病院の主治医とも、退院時にこの相談をしてもらえると助かります。
04福祉用具の暫定利用
介護ベッド(特殊寝台)や車いすは、原則として要介護2以上が対象です。暫定で要介護1以下の見込みの方が使うときは、「軽度者に対する福祉用具の例外給付」の手続き(主治医の意見と市区町村の確認)が要る場合があります。退院直後にベッドが必要なことが明らかなら、ケアマネジャーが早めに市区町村に確かめます。
| 用具 | 原則の対象 | 軽度者の例外 |
|---|---|---|
| 特殊寝台(介護ベッド)・付属品 | 要介護2以上 | 起き上がり・寝返りができないなど、調査票の該当項目で確認できれば可 |
| 車いす・付属品 | 要介護2以上 | 歩行ができないなどで確認できれば可 |
| 体圧分散マットレス(床ずれ防止用具) | 要介護2以上 | 寝返りができないなどで確認できれば可 |
| 手すり・歩行器・スロープ | 要支援1から | — |
例外の手続きは市区町村によって運用が違います。暫定の段階で必要なら、申請と同時にケアマネジャーが確かめます。
05よくある質問
- ケアマネジャーが決まっていない:退院前に居宅介護支援事業所に依頼します。暫定プランを作れるのは、契約したケアマネジャーだけです。病院の MSW が事業所を紹介できます。
- 暫定で使ったサービスの請求は?:事業所は結果が出るまで請求を保留し、結果が出てから請求します。結果が遅れると事業所の請求も遅れるので、ケアマネジャーが事業所に見込みを伝えておきます。
- 結果が出るまでに状態が変わった:認定調査のあとに悪化した場合は、結果が出てから区分変更を申請します。調査の前なら、調査員に今の状態を伝えます。
- 要支援になりそう。暫定で訪問介護を使える?:要支援の訪問型サービスは市区町村の総合事業になります。地域包括支援センターが暫定のプランを作ります。
- 認定の結果が申請から30日を過ぎても来ない:市区町村に確認します。遅れる場合は「処理見込み期間」の通知が届きます。暫定利用はそのまま続けられます。
06暫定ケアプランの例
| サービス | 内容 | 保険 |
|---|---|---|
| 訪問看護 | 退院当日から週3回。状態の観察・処置・服薬の確認 | 介護保険(特別指示書の期間は医療保険) |
| 訪問診療 | 退院翌日に初回。以後2週間に1回 | 医療保険 |
| 訪問介護 | 毎日朝(食事・排泄・服薬の声かけ) | 介護保険 |
| 福祉用具 | 介護ベッド・体圧分散マットレス・車いす | 介護保険 |
| 薬局 | 退院時処方の確認と次回からの配達 | 医療保険(認定が出たら居宅療養管理指導) |
要介護1の結果が出た場合は、訪問介護の回数を調整し、福祉用具は例外給付の手続きを確かめます。
07受け入れ先の探し方
暫定ケアプランを作るには、まず居宅介護支援事業所を決める必要があります。Med-Tasuki(メドタスキ)では、居宅介護支援事業所・訪問看護・訪問診療を地域ごとに探せます。医療機関・介護事業所の方は、一括依頼で近くの事業所にまとめて相談できます。
参考にした情報
監修者のプロフィール

Maekawa Hirotaka
脳神経内科専門医・頭痛専門医
地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者
脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。
Med-Tasukiを開発した理由を読む在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。