ひとことで言うと
居宅療養管理指導は、通院が難しい要介護の方の自宅に医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士が訪問し、療養の助言やケアマネジャーへの情報提供を行う介護保険のサービスです。支給限度額の枠には入らず、訪問診療(医療保険)と同じ訪問の中で行われることが多いです。
介護保険の利用票に「居宅療養管理指導」という項目があって、「これは何のサービスなのか」とご家族に聞かれるケアマネジャーは多いと思います。訪問診療と何が違うのか、誰が来るのか、限度額に入るのか。仕組みを職種ごとに整理します。
01居宅療養管理指導とは
居宅療養管理指導は、通院が困難な要支援・要介護の方の自宅に、医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士が訪問し、療養上の管理や指導を行い、ケアマネジャーにケアプラン作成に必要な情報を提供する介護保険のサービスです。医師や歯科医師の場合、医療保険の訪問診療(歯科訪問診療)と同じ訪問の中で、介護保険の部分として行われます。
限度額の外
支給限度額に入らない
ほかのサービスの枠を減らさない
5職種
医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士
職種ごとに回数の上限
ケアマネへの情報
医師・歯科医師の役割
ケアプランに医療の視点を入れる
| 職種 | 内容 | 回数の目安 |
|---|---|---|
| 医師 | 訪問診療と合わせて、療養上の助言(生活・介護の注意点)と、ケアマネジャーへの情報提供 | 月2回まで |
| 歯科医師 | 歯科訪問診療と合わせて、口腔の管理の助言、ケアマネジャーへの情報提供 | 月2回まで |
| 薬剤師 | 薬の配達・一包化・残薬整理・服薬の指導。医師の指示で訪問 | 月4回まで(末期がん・中心静脈栄養は週2回・月8回まで) |
| 管理栄養士 | 食事の相談・栄養管理の指導。医師の指示で訪問 | 月2回まで |
| 歯科衛生士 | 口腔ケアの指導。歯科医師の指示で訪問 | 月4回まで |
回数は介護報酬の決まりで、改定で変わります。最新の内容は厚生労働省の資料で確認してください。

医師の居宅療養管理指導は、ご家族から見ると「診療のついでに何か算定されている」ように見えるかもしれません。私にとっては、診察で気づいたこと(転倒の危険、食事の形、介護者の疲れ)をケアマネジャーに文書で伝える大切な仕事です。この情報提供がケアプランに反映されると、医療と介護がかみ合います。
02訪問診療との関係
医師の場合、1回の訪問の中で「診察・処方(医療保険の訪問診療)」と「療養上の助言とケアマネジャーへの情報提供(介護保険の居宅療養管理指導)」が同時に行われます。ご家族には、医療保険の請求と介護保険の請求が別々に届くので、「二重に取られている」と感じることがあります。仕組みを事前に説明しておくと安心につながります。
| 訪問診療 | 居宅療養管理指導(医師) | |
|---|---|---|
| 保険 | 医療保険 | 介護保険 |
| 内容 | 診察・処方・処置・訪問看護への指示 | 生活と介護の助言、ケアマネジャーへの情報提供 |
| 対象 | 通院が困難な方(介護保険の認定は不要) | 通院が困難で、要支援・要介護の認定がある方 |
| 限度額 | 関係なし | 入らない(枠を使わない) |
| ケアプラン | 記載は任意 | 位置づける(サービスとして記載) |
認定のない方には行えない
居宅療養管理指導は介護保険のサービスなので、要介護認定を受けていない方には行えません。その場合、医師の訪問は医療保険の訪問診療だけになり、薬剤師の訪問は医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導」になります。
03ケアマネジャーへの情報提供
医師・歯科医師の居宅療養管理指導では、ケアマネジャーにケアプランの作成に必要な情報を文書などで提供することが要件になっています。この仕組みを活かすと、医療の視点をケアプランに入れやすくなります。
医師からケアマネジャーへ伝わると役に立つ情報
- 病状の見通し(安定している・進行している・数か月で変化しそう)
- 介護で注意すること(転倒の危険、食事の形態、水分の制限、皮膚の弱さ)
- 薬の変更と、それによる生活の変化(眠気・ふらつき・排尿の変化)
- 通所・入浴・外出の可否と条件
- 訪問看護・訪問リハ・薬剤師の訪問の必要性
- 急変時の方針(本人・家族との話し合いの状況)
- 介護者の負担についての医師の見立て
ケアマネジャーの側からも、「モニタリングで気づいたこと」(食事量の減少、夜間の様子、介護者の疲れ)を医師に伝えると、次の訪問でその点を診てもらえます。情報の往復が、居宅療養管理指導の本来の姿です。

ケアマネジャーから「先生、最近ご家族が疲れているようです」「食事が半分しか食べられていません」と一言もらえると、診察の中身が変わります。逆に、私からの情報提供の文書が読まれずに終わっていることもあるので、サービス担当者会議で「文書のここを見てほしい」と伝えるようにしています。
04薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士の使いどころ
- 薬剤師:薬が多い・飲み忘れる・残薬が多い方。医師の指示で訪問し、一包化・服薬カレンダー・残薬整理を行います。詳しくは「訪問薬局の頼み方」の記事にまとめています。
- 管理栄養士:低栄養・体重減少・糖尿病や腎臓病の食事制限がある方。医師の指示で訪問し、食事の内容や形態、調理の工夫を助言します。実施している医療機関・事業所は限られるので、地域で探します。
- 歯科衛生士:口腔ケアが必要な方、義歯の管理が難しい方。歯科医師の指示で訪問し、口腔ケアの方法を本人・家族・介護職に指導します。
- Q1.薬が多い・飲み忘れ・残薬が多いはい薬剤師の居宅療養管理指導(医師の指示)いいえ
- Q2.食事が減った・体重が落ちた・食事制限があるはい管理栄養士の居宅療養管理指導(医師の指示。実施先を探す)いいえ
- Q3.口の汚れ・口臭・義歯の不具合・むせはい歯科医師の歯科訪問診療と、歯科衛生士の居宅療養管理指導いいえ
05よくある質問
- 費用は?:介護保険の自己負担(1〜3割)で、職種と回数で決まります。医師の場合は訪問診療の医療保険の自己負担が別にかかります。金額は事業所に確かめます。
- ケアプランに書かないと使えない?:介護保険のサービスなので、ケアプランに位置づけます。限度額には入りませんが、利用票には載せます。
- 訪問診療を受けていれば自動で付く?:介護保険の認定がある方に訪問診療を行い、ケアマネジャーへの情報提供などの要件を満たせば算定されます。医療機関が説明します。
- 有料老人ホームでも使える?:使えます。特別養護老人ホームなど、施設のサービスに含まれる施設では使えません。
- 要支援でも使える?:使えます(介護予防居宅療養管理指導)。
06サービス担当者会議での使い方
医師の居宅療養管理指導で提供される情報は、サービス担当者会議で活かすと効果が出ます。会議に医師が出席できないことが多いので、情報提供の文書を会議の資料として使い、次の点をチームで確かめます。
- 病状の見通しに合わせて、サービスの量や種類を先回りして変えるか
- 医師が指摘した注意点(転倒・食事の形・皮膚)を、訪問介護・通所の計画に反映しているか
- 薬の変更による生活の変化を、介護職が観察して報告する仕組みがあるか
- 医師に伝えるべきこと(介護者の疲れ・食事量の減少・夜間の様子)を誰がいつ伝えるか
07受け入れ先の探し方
Med-Tasuki(メドタスキ)では、訪問診療・訪問薬局・訪問歯科を地域や対応内容で探せます。医療機関・介護事業所の方は、一括依頼で近くの施設にまとめて相談できます。
参考にした情報
監修者のプロフィール

Maekawa Hirotaka
脳神経内科専門医・頭痛専門医
地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者
脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。
Med-Tasukiを開発した理由を読む在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。