ひとことで言うと
在宅介護を長く続けるには、介護者が定期的に休める仕組みが要ります。介護保険のショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)に加えて、医療の必要性が高い方にはレスパイト入院や東京都の難病の事業があります。「限界が来てから」ではなく、計画に組み込むのが要です。
在宅介護は、介護する人が倒れると続きません。ご家族が定期的に休む仕組みを「レスパイト(休息)」と呼び、介護保険のショートステイのほか、医療の必要性が高い方のための入院の仕組みもあります。種類と使い分け、計画への組み込み方をまとめます。
01ショートステイの種類
| 種類 | 場所 | 向いている方 | 医療の対応 |
|---|---|---|---|
| 短期入所生活介護 | 特別養護老人ホームなど | 介護が中心で、医療処置が少ない方 | 看護師はいるが医師は常駐しない。処置の内容によっては断られる |
| 短期入所療養介護 | 介護老人保健施設・病院・診療所 | 医療処置やリハビリが必要な方 | 医師が常駐。胃ろう・酸素・インスリンなどに対応しやすい |
| 小規模多機能・看多機の泊まり | 登録している事業所 | 普段から通いを使っている方 | 看多機なら看護師の対応 |
| レスパイト入院(医療保険) | 病院 | 医療の必要性が高く、ショートステイでは受けられない方 | 医師・看護師の対応。病院の体制による |
連続30日
介護保険のショートステイの上限
31日目は自己負担
おおむね半分
認定期間の中で使える日数の目安
市区町村の運用による
計画に組む
限界が来る前に
月1回など定期的に

介護するご家族に「疲れていませんか」と聞くと、多くの方が「大丈夫です」と答えます。私はその言葉をそのまま受け取らず、「月に一度は休む日を最初から予定に入れましょう」と提案しています。ショートステイを「本人を預ける後ろめたいこと」ではなく、在宅を続けるための決まった手順にしてもらいたいからです。
02日数の決まり
- 連続して使えるのは30日まで。31日目からは介護保険の給付の対象外(全額自己負担)になります。一度自宅に戻れば、再び使えます。
- 認定の有効期間の中で使える日数は「おおむね半分」が目安です。ただし、介護者の病気や入院などやむを得ない事情があれば、市区町村に相談して超えられることがあります。
- 支給限度額の中で使います。ショートステイの費用(介護保険の部分)は限度額に入るので、訪問介護や通所との兼ね合いを見ます。食費・滞在費は別で、所得に応じた軽減(負担限度額認定)があります。
- 緊急のショートステイ:介護者の急病などのときに、空きがあれば当日や翌日に使える事業所もあります。日頃から「緊急時に相談できる事業所」を決めておきます。
予約は早めに
ショートステイ、特に短期入所療養介護は空きが少なく、年末年始やお盆は数か月前に埋まります。「疲れたから来週」では取れないことが多いので、ケアマネジャーが月ごとの計画の中で予約を確保します。
03医療処置がある方の休息
胃ろう・吸引・在宅酸素・人工呼吸器・中心静脈栄養などがある方は、受けられるショートステイが限られます。短期入所療養介護(老健・病院)か、病院のレスパイト入院が選択肢になります。難病の方は、東京都の「在宅難病患者一時入院」の事業も使えます。
| 選択肢 | 仕組み | 相談先 |
|---|---|---|
| 短期入所療養介護(老健) | 介護保険。医師が常駐。処置の内容によって受け入れの可否が決まる | ケアマネジャーから施設へ |
| 短期入所療養介護(病院・診療所) | 介護保険。医療の対応が厚い | ケアマネジャーから施設へ |
| レスパイト入院 | 医療保険の入院として、介護者の休息の目的で受け入れる病院がある | 訪問診療医から病院へ。地域の病院に事前に確かめる |
| 在宅難病患者一時入院(東京都) | 難病の方が対象。都が確保した病床に1回最長1か月、年度内90日まで | 保健所・保健センター |
| 看多機の泊まり | 訪問看護の看護師がいる事業所の泊まり | 登録している看多機 |
東京都の事業の内容は年度で変わります。東京都保健医療局のページで確認してください。

人工呼吸器や頻回の吸引がある患者さんのご家族は、「預けられる場所がない」と最初からあきらめていることがあります。私は、地域のどの病院がレスパイト入院を受けてくれるかを普段から把握し、状態が落ち着いているうちに一度使ってもらうようにしています。初回を経験しておくと、緊急のときに動きやすくなります。
04休息を計画に組み込む
ケアプランに介護者の休息を組むときの確認
- 介護者が何をするために、どれくらいの時間の休息が要るか(通院・仕事・睡眠・自分の用事)
- 毎月の定期的なショートステイ(例:月1回2泊)を組めるか
- 通所(デイサービス)の日を「介護者の休みの日」として位置づけているか
- 緊急時(介護者の急病)に使える事業所を決めているか
- 本人がショートステイを受け入れられるか。初回は短い日数から
- ショートステイ中の医療(薬・処置・訪問診療との連絡)の引き継ぎ
- 費用(食費・滞在費の軽減の申請)
- Q1.医療処置が多い・人工呼吸器があるはいレスパイト入院・短期入所療養介護(病院)・東京都の一時入院(難病)を訪問診療医と相談いいえ
- Q2.胃ろう・酸素・インスリンなど、一定の医療処置があるはい短期入所療養介護(老健)を中心に探すいいえ
- Q3.介護が中心で医療処置は少ないはい短期入所生活介護(特養など)。認知症の方は認知症に慣れた施設をいいえ
- Q4.普段から小規模多機能・看多機を使っているはいその事業所の泊まりを計画に組むいいえ
05よくある質問
- 本人が嫌がる:初回は1泊から、なじみの通所と同じ法人の施設から、といった工夫をします。「ご家族が倒れたら在宅は続けられない」ことを本人に率直に伝えることも必要です。
- ショートステイ中に具合が悪くなったら?:施設の看護師が対応し、必要なら病院に搬送します。事前に主治医の連絡先と急変時の方針を施設に伝えておきます。
- 訪問診療はショートステイ中も来てくれる?:短期入所中は施設の医師や協力医療機関が診るのが原則で、訪問診療は入りません。薬と処置の指示を書面で引き継ぎます。
- ショートステイの費用が高い:食費・滞在費は所得に応じた軽減(負担限度額認定)があります。市区町村に申請します。
- レスパイト入院はどこでもできる?:受け入れる病院は限られます。訪問診療医や病院の地域連携室に、事前に相談しておきます。
06ショートステイに持っていくもの・伝えること
ショートステイの前に準備すること
- 薬:日数分を一包化し、飲み方の一覧(お薬手帳)を添える。頓服薬の使い方も
- 医療処置の物品と手順(胃ろうの注入の時間・量、酸素の流量、インスリンの単位など)
- 主治医の連絡先と、急変時の方針(救急搬送を望むか)
- 食事の形態(きざみ・ミキサー・とろみ)とアレルギー
- 日常の様子(睡眠・排泄の習慣、好きなこと、落ち着かないときの対応)
- 着替え・おむつ・入れ歯・眼鏡・補聴器
- 緊急連絡先(家族・ケアマネジャー)
施設側は、初めての方を短い期間で受け入れるため、情報が多いほど安全に対応できます。ケアマネジャーが情報提供の書式を用意している施設も多いので、事前に確かめます。
07受け入れ先の探し方
Med-Tasuki(メドタスキ)では、介護施設・病院・訪問看護ステーションを地域ごとに探せます。医療機関・介護事業所の方は、一括依頼で近くの施設にまとめて相談できます。
参考にした情報
監修者のプロフィール

Maekawa Hirotaka
脳神経内科専門医・頭痛専門医
地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者
脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。
Med-Tasukiを開発した理由を読む在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。