在宅の医療処置とケア

褥瘡の在宅ケア:訪問看護・訪問診療・福祉用具の連携

公開|内容の確認:

対象:ケアマネジャー・訪問看護師・訪問介護・福祉用具の方、ご家族

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)

この記事の監修

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

Med-Tasuki(メドタスキ)は、監修者が開発した、在宅医療・介護の施設どうしが患者さんの受け入れをチャットで相談できる無料のサービスです。近くの施設へまとめて相談できる一括依頼も使えます。

ひとことで言うと

褥瘡は「処置」だけでは治りません。体圧を分散するマットレス、栄養、体位変換、失禁への対応をチームで組むことが土台です。真皮を越える褥瘡は別表8に当たり、医療保険の訪問看護で頻回の訪問ができます。

褥瘡(床ずれ)は、同じ場所に体重がかかり続けて皮膚とその下の組織が傷む状態です。在宅では、処置をする訪問看護だけでなく、マットレスを選ぶ福祉用具、体位変換をする介護職、栄養を見る医師・栄養士まで、多くの職種が関わらないと治りません。在宅チームの組み方をまとめます。

01褥瘡の深さと見方

褥瘡は深さで分けて考えます。皮膚が赤くなっているだけの段階(押しても白くならない赤み)から、皮膚が欠けて真皮に達する段階、脂肪や筋肉・骨まで達する深い段階まであります。深さによって、処置の内容、医師の関わり方、訪問看護で使える制度が変わります。

褥瘡の深さの目安
段階見た目在宅での対応の中心
皮膚の赤み(消えない)押しても白くならない赤み。皮膚は破れていない体圧の分散・体位変換・保湿。ここで止めるのが最も大事
浅い(真皮まで)皮膚が欠けている。水ぶくれ・浅い傷傷を覆う処置、失禁対策、栄養
深い(真皮を越える)脂肪・筋肉・骨が見える。壊死組織・ポケット医師の関与(壊死組織の除去・感染の管理)、頻回の訪問看護

真皮を越える褥瘡は「別表8」に当てはまり、医療保険の訪問看護で週4日以上・複数のステーションの訪問ができます。特別訪問看護指示書も月2回まで出せます。

体圧分散

治療の土台

マットレス・クッション

2時間

体位変換の目安

マットレスの性能で延ばせる

別表8

真皮を越える褥瘡

医療保険で頻回の訪問看護

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
褥瘡の相談で私が最初に見るのは傷そのものより「何の上に寝ているか」と「体重が落ちていないか」です。処置をどれだけ丁寧にしても、マットレスと栄養が変わらなければ治りません。ケアマネジャーから福祉用具の状況を先に教えてもらえると、訪問の前に方針を立てられます。

02在宅チームの役割分担

褥瘡の在宅チーム
職種・事業所担うこと
訪問診療医深さと感染の評価、処置の指示(外用薬・被覆材)、壊死組織の除去、栄養の処方、必要なら皮膚科・形成外科への紹介
訪問看護傷の観察と記録(大きさ・深さ・浸出液・においの変化)、処置、体位変換の指導、失禁対策、家族・介護職への説明
ケアマネジャーマットレスと体位変換の体制の調整、訪問介護・訪問入浴の回数、栄養改善サービスの検討
福祉用具体圧分散マットレス(エアマット等)の選定・設定・点検、車いすクッション、ポジショニング用品
訪問介護体位変換、おむつ交換、皮膚の観察と報告、食事の介助
薬局・管理栄養士外用薬・被覆材の供給、栄養補助食品や食事の相談

在宅で褥瘡が治りにくい最大の理由は、「処置をする人」と「予防をする人」が別で、情報がつながらないことです。訪問看護が傷の写真と大きさを記録して、ケアマネジャー・訪問介護・福祉用具と共有する仕組みを、最初に決めておきます。

03予防と治療の土台(処置より前に)

  • 体圧の分散:自分で寝返りができない方には、エアマットレスなどの体圧分散マットレスを介護保険でレンタルします。マットレスの種類と設定(体重に合わせた硬さ)は福祉用具の担当者に確かめます。
  • 体位変換:おおよそ2時間ごとが目安ですが、高機能のマットレスでは間隔を延ばせることがあります。夜間に家族が起きられない場合は、マットレスの性能で補います。
  • 栄養:体重の減少、たんぱく質の不足は治りを遅らせます。食事量、体重の推移を記録し、医師や栄養士に相談します。
  • 皮膚の湿り:尿や便で皮膚が湿ったままだと傷みやすくなります。おむつの選び方、交換の回数、皮膚の保護剤を見直します。
  • ずれ:ベッドの頭を上げるときや移乗のときに皮膚が引っ張られると傷みます。背抜き・足抜きの方法を介護職と家族で共有します。

褥瘡の在宅ケアで確かめること

  • 体圧分散マットレスが入っているか。設定は体重に合っているか
  • 体位変換の担当と間隔(日中・夜間)
  • 傷の記録(大きさ・深さ・浸出液・においの変化)を誰がどこに残すか
  • 処置の物品(外用薬・被覆材・洗浄の道具)の供給元と残量
  • 食事量・体重の推移
  • おむつと皮膚の保護の方法
  • 悪化のサイン(におい・発熱・傷が広がる)のときの連絡先

感染のサイン

傷のにおいが強くなる、周りの赤みや腫れが広がる、膿が増える、発熱する、といったときは感染の疑いがあります。処置の間隔を待たず、医師に連絡します。骨まで達している深い褥瘡は、病院での治療が必要なこともあります。

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
在宅の褥瘡は、家族や介護職が「よくなっているか」を判断しにくいものです。訪問看護師さんが傷の大きさを定規で測って記録し、写真と一緒に共有してくれると、私も方針を変える時期を判断しやすくなりますし、ご家族の励みにもなります。

04福祉用具の選び方と介護保険

体圧分散マットレスは介護保険の「福祉用具貸与」で借りられます。原則は要介護2以上が対象ですが、要支援・要介護1の方でも、寝返りができないなど一定の状態が調査票で確認できれば、例外的に借りられることがあります。褥瘡がある、または危険が高い方は、ケアマネジャーが早めに手続きします。

褥瘡に関わる福祉用具(介護保険)
用具使う方確かめること
体圧分散マットレス(エアマット等)自分で寝返りができない方体重に合わせた設定。故障時の連絡先
車いす用クッション座っている時間が長い方座面の圧の分散。ずり落ちの防止
ポジショニング用クッション体位変換のとき介護職・家族が同じ置き方をできるか
特殊寝台(介護ベッド)背上げ・高さ調整が必要な方背上げ後の背抜き

05よくある質問

  • 処置は家族がしてもよい?:主治医と訪問看護の指導のもとで、簡単な処置(洗浄・被覆材の貼り替え)をご家族が担うことはあります。深い褥瘡や感染のある褥瘡は看護師・医師が行います。
  • 訪問入浴は使える?:褥瘡があっても、医師の許可があれば訪問入浴は使えます。傷を保護して入り、入浴後に処置をします。
  • 皮膚科や形成外科に行かないといけない?:在宅の医師で対応できることが多いですが、骨まで達している、感染が強い、治らない、といったときは専門の外来や入院での治療を勧められます。
  • 治るまでどれくらい?:深さと栄養、体圧の管理によって大きく違います。浅いものは数週間、深いものは数か月かかることもあります。「よくなっているか」は、傷の大きさを定期的に測って判断します。

06受け入れ先を探すときに伝えること

褥瘡のある方の訪問看護・訪問診療の依頼では、褥瘡の場所と深さ、処置の内容と回数、体圧分散マットレスの有無、栄養の状態、介護の体制を伝えます。真皮を越える褥瘡は別表8に当てはまり、医療保険の訪問看護で頻回に入れることも伝えると、受け入れ側が計画を立てやすくなります。

参考にした情報

監修者のプロフィール

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
前川 裕貴

Maekawa Hirotaka

脳神経内科専門医・頭痛専門医

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。

2012〜2018年順天堂大学 医学部 医学科
2018〜2020年東京逓信病院 初期臨床研修
2020〜2023年東京大学医学部附属病院 脳神経内科 特任臨床医
2023年〜埼玉精神神経センター 頭痛専門外来
荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
昭和医科大学 脳神経内科 客員講師
2025年〜株式会社Iris Wellness設立

在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。

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監修:前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医)/この記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。受け入れの状況や費用は各施設に、治療の判断は主治医にご相談ください。