在宅医療の基本

老老介護・家族介護者を支える:介護者が倒れないために

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対象:ケアマネジャー・訪問看護師・訪問介護の方、ご家族

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)

この記事の監修

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

Med-Tasuki(メドタスキ)は、監修者が開発した、在宅医療・介護の施設どうしが患者さんの受け入れをチャットで相談できる無料のサービスです。近くの施設へまとめて相談できる一括依頼も使えます。

ひとことで言うと

在宅療養が続くかどうかは、介護する家族が倒れないかで決まります。介護者の睡眠・体調・仕事・気持ちを在宅チームが定期的に確かめ、休息(レスパイト)と相談先を計画に組み込みます。「大丈夫です」という言葉の裏を見る目が、在宅チームに求められます。

在宅療養の「患者さん」は一人ですが、在宅チームが支えるのは介護する家族も含めた二人以上です。高齢の妻が高齢の夫を介護する老老介護、仕事をしながら親を介護する子ども、遠方から通う家族。介護者が倒れれば在宅は続きません。介護者の負担をどう見て、どう支えるかをまとめます。

01介護者の負担のサイン

介護者の負担に気づくサイン
分野サイン気づく場面
睡眠夜間に何度も起きる。昼間に眠そう。「眠れていない」と言う訪問看護・訪問介護の会話
体調やせた。腰痛・血圧・持病の悪化。自分の受診を後回しにしている訪問のたびの様子
気持ち表情が乏しい。本人に強く当たる。「もう無理」「自分がいなくなれば」と口にする訪問看護・ケアマネの面談
生活仕事を休みがち。買い物や食事が雑になる。家の中が荒れる訪問介護・ケアマネの観察
本人の状態本人の清潔・栄養・皮膚の状態が悪くなる(介護が追いついていない)訪問看護・訪問診療

「大丈夫」

額面どおりに受け取らない

限界が近い人ほどそう言う

計画に組む

休息

限界が来てからでは遅い

介護者の受診

見落としやすい

自分の病気を後回しにする

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
訪問診療では、患者さんの診察と同じくらい、介護するご家族の顔色を見ています。老老介護では、介護している側のほうが実は体調が悪いこともあります。「奥さんの血圧も測らせてください」と声をかけると、介護者が自分のことを話し始めるきっかけになります。

02在宅チームが確かめること

介護者について定期的に確かめること

  • 夜間の介護の回数と、介護者の睡眠時間
  • 介護者自身の持病・通院・服薬(後回しになっていないか)
  • 介護者が仕事をしているか。休みを取れているか
  • 介護者が自分のための時間(外出・趣味・友人)を取れているか
  • 介護者が本人に強く当たる場面がないか(介護者自身が苦しんでいるサイン)
  • 介護者が「相談できる人」を持っているか
  • 介護者が「休んでよい」「預けてよい」と思えているか(罪悪感)
  • 経済的な心配(介護費用・収入の減少)

これらは、モニタリングの「利用者の状況」の欄に埋もれがちです。ケアマネジャーは「介護者の状況」を独立した項目として毎回確かめ、訪問看護・訪問介護からの報告も集めます。

03休息を組む

介護者の休息を作る手段
手段作れる時間注意
通所(デイサービス・デイケア)日中の数時間、週数回「介護者の休みの日」と位置づける。本人の受け入れ
訪問介護訪問の時間帯に介護者が外出できる見守りだけの利用は制限がある。用事を組む
ショートステイ数日〜1週間、月1回など予約が取りにくい。定期的に確保する
小規模多機能・看多機通いと泊まりを柔軟にケアマネジャーが替わる
レスパイト入院医療処置が多い方の数日〜2週間受け入れる病院を訪問診療医と探す
家族・親戚の交代週末など遠方の家族に「月1回は来てほしい」と頼む

「まだ大丈夫」のうちに

休息の仕組みは、介護者が限界になってから探すと間に合いません。ショートステイは数か月先まで埋まり、本人も初めての場所を受け入れにくくなります。介護が始まった早い段階で「月1回のショートステイ」「週2回の通所」を当たり前の予定として組んでおきます。

04仕事と介護の両立

  • 介護休業:家族1人につき通算93日まで、3回まで分けて取れます。雇用保険から介護休業給付金(賃金の67%)が出ます。介護の「体制を作る期間」に使うのが本来の趣旨です。
  • 介護休暇:年5日(対象家族が2人以上なら10日)。時間単位で取れます。通院の付き添いやケアマネジャーとの面談に使えます。
  • 短時間勤務・残業の免除:介護を理由に、勤務時間の短縮や残業の免除を会社に求められます。
  • 会社に伝える:介護をしていることを上司や人事に早めに伝えると、制度を使いやすくなります。「介護離職」を防ぐことが本人にも会社にも大切です。
  • 相談先:勤務先の人事、地域包括支援センター、都道府県の労働局。

介護のために仕事を辞めると、収入が減るだけでなく、介護者が社会から孤立して負担が増すことが知られています。「辞めるしかない」と言う介護者には、制度とサービスの組み合わせで続けられないかを一緒に考えます。

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
「親の介護のために仕事を辞めようと思う」と相談されたら、私は一度立ち止まってもらうようにしています。仕事は介護者にとって、収入だけでなく気持ちの逃げ場でもあるからです。ケアマネジャーと一緒に、辞めずに済む組み合わせを探すのが、結局は患者さんのためにもなります。

05相談先と介護者自身のケア

  • 地域包括支援センター:介護の相談の総合窓口。介護者向けの教室や家族会の情報もあります。
  • 家族会・認知症カフェ:同じ立場の人と話せる場。「自分だけではない」と思えることが支えになります。市区町村や社会福祉協議会が案内しています。
  • かかりつけ医:介護者自身の体調不良、不眠、気分の落ち込みは、我慢せず受診します。介護うつは珍しくありません。
  • 訪問看護:患者さんの訪問のときに、介護者の話を聞く時間を意識的に取ります。
  • 経済的な相談:介護費用の負担軽減(高額介護サービス費・負担限度額認定)、生活の相談は市区町村の窓口へ。
介護者の負担が大きいときの動き方
  1. Q1.介護者が「もう無理」「自分がいなくなれば」と口にする、または本人への強い当たりがある
    はい
    すぐにケアマネジャーに連絡。緊急のショートステイや訪問の増加。介護者の受診を勧める
    いいえ
  2. Q2.介護者の睡眠不足・体調不良が続いている
    はい
    夜間の負担を減らす(訪問看護・薬の見直し・ショートステイ)。介護者の受診
    いいえ
  3. Q3.介護者が休息のサービスを「後ろめたい」と使えない
    はい
    医師・訪問看護から「休むことは治療の一部」と伝える。短い日数から試す
    いいえ
定期的に介護者の状況を確かめ、休息の予定を計画に組み続ける

06よくある質問

  • 本人が介護者以外を受け入れない:時間をかけて慣らします。同じヘルパーに固定する、最初は介護者も同席する、といった工夫を事業所に頼みます。
  • 介護者が高齢で、自分も介護保険の認定を受けている:夫婦ともにサービスを使えます。同じケアマネジャーが両方を担当すると、家全体で計画を立てやすくなります。
  • 遠方の家族に何を頼めばよい?:緊急時の連絡先、意思決定の相談、月1回の訪問で介護者を休ませる、費用の分担。役割を具体的に頼みます。
  • 介護者が入院した:緊急のショートステイ、訪問の増加、看多機の泊まりなどで、本人の在宅を一時的に支えます。事前に「介護者が倒れたときの手順」を決めておくと動きが速くなります。

07受け入れ先の探し方

Med-Tasuki(メドタスキ)では、居宅介護支援事業所・訪問看護・訪問介護・介護施設を地域ごとに探せます。医療機関・介護事業所の方は、一括依頼で近くの施設にまとめて相談できます。

参考にした情報

監修者のプロフィール

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
前川 裕貴

Maekawa Hirotaka

脳神経内科専門医・頭痛専門医

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。

2012〜2018年順天堂大学 医学部 医学科
2018〜2020年東京逓信病院 初期臨床研修
2020〜2023年東京大学医学部附属病院 脳神経内科 特任臨床医
2023年〜埼玉精神神経センター 頭痛専門外来
荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
昭和医科大学 脳神経内科 客員講師
2025年〜株式会社Iris Wellness設立

在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。

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監修:前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)/この記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。受け入れの状況や費用は各施設に、治療の判断は主治医にご相談ください。