神経難病|制度とお金

神経難病のレスパイト入院|東京都の在宅難病患者一時入院事業の対象・日数・申し込み方

公開|内容の確認:

対象:ケアマネジャー・訪問看護師・保健師・在宅医の方、ご家族

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)

この記事の監修

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

Med-Tasuki(メドタスキ)は、監修者が開発した、在宅医療・介護の施設どうしが患者さんの受け入れをチャットで相談できる無料のサービスです。近くの施設へまとめて相談できる一括依頼も使えます。

ひとことで言うと

東京都は、難病の方を介護する家族が休めるよう、都内の病院にベッドを確保しています。1回最長1か月・年度内90日まで。申し込みは保健所へ、利用日の3週間前からです。

レスパイトとは、介護する家族が休息をとれるようにする支援のことです。神経難病の在宅療養では、夜間のたんの吸引や体位変換、人工呼吸器の見守りなどで、家族の介護が昼夜を問わず長く続きます。家族が体調を崩したり、冠婚葬祭で家を空けたりするときの備えは、在宅療養を続けるための大事な計画の一つです。この記事では、東京都の「在宅難病患者一時入院事業」を中心に、神経難病の方が使えるレスパイトの仕組みをまとめます(内容は2026年9月時点の都の案内にもとづきます)。

01在宅難病患者一時入院事業とは

東京都は、難病の方の在宅生活を支える家族などの介護者が、自身の療養や休息、冠婚葬祭などの行事で一時的に介護が難しくなったときに、患者さんが短期間入院できるよう、都内の病院にベッドを確保しています。2026年4月1日現在、都と委託契約を結んだ都内13の病院に、計19床が用意されています。委託先の病院の一覧は、東京都保健医療局の難病ポータルサイトに載っています。

この事業でいう「在宅生活」とは、申し込みから入院までの間と、退院先が自宅であることを指します。入院中の方が転院先として使うことはできません。

02対象になる方

次の要件をすべて満たす方が対象です。

  • 都内に住み、難病の医療費助成の対象の病気にかかっていて、在宅で生活している方
  • 家族などの介護者の療養や休息などの理由で、在宅での介護を受けることが難しくなった方
  • 常に医学的な管理が必要な方
  • 病状が安定していて、事業の利用について主治医の同意が得られている方

在宅で人工呼吸器を使っているなど医療依存度が高く、介護保険のショートステイや障害福祉サービスの短期入所などのほかの制度を使えない方が優先されます。また、介護者の休息が目的の事業のため、原則として一人暮らしの方は利用できません。

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
主治医の同意が要件の一つなので、利用を考え始めた時点で早めに相談してください。病状が落ち着いている時期を見ながら、入院先に伝えたい注意点を一緒に整理できます。家族が休むことは、在宅療養を長く続けるための大切な準備だと考えています。

03入院できる日数と、申し込み方

最長1か月

1回の申し込みで入院できる期間

年度内90日

この範囲で繰り返し利用できる

3週間前から

申し込める時期

24時間人工呼吸器を使っている方は、利用開始日の1か月前から

  • 申し込み先は、お住まいの地域を管轄する保健所・保健センターなどです。
  • ベッドの空き状況により、希望どおりにならないことがあります。申し込んだ日程は原則として変更できません。
  • 自己都合によるキャンセルと、入院日の10日前以降のキャンセルは、利用日数に数えられます。
  1. 1

    家族が休みたい時期を早めに聞いておく

    冠婚葬祭や家族の手術など、予定がわかった時点でケアマネジャーや訪問看護師に伝えてもらいます。確認や調整が入ることがあるので、都も早めの相談をすすめています。

  2. 2

    保健所・保健センターに相談する

    保健所で申請書を受け取り、必要な書類をそろえます。

  3. 3

    主治医に診療情報提供書を依頼する

    地域の主治医が書きます(様式は任意)。都の難病ポータルに、主治医向けの依頼文も用意されています。

  4. 4

    訪問看護ステーションが看護サマリーを書く

    様式は任意です。ふだんのケアの内容を入院先に伝える大事な書類です。

  5. 5

    受給者証などの写しをそろえる

    特定医療費(指定難病)受給者証などの写しを添えます。受給者証がない方は、臨床調査個人票または指定難病登録者証の写しなどを添えます。

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    入院日の持ち物を確かめる

    保険の資格を確認できるもの(マイナンバーカードなど)、特定医療費(指定難病)受給者証、自己負担上限額管理票を持っていきます(都単独の助成の方は医療券)。

利用にあたっての注意

治療を目的とした入院には使えません。リハビリテーションなども対象外です。入院中は在宅と同じケアが受けられないことがあります。申し込み後に病状が悪くなった場合は、原則としてキャンセルになります。入院が決まる前に病院へ直接問い合わせることは控えるよう、都が案内しています。病室は病院が指定する部屋で個室とは限りませんが、指定の病室なら差額ベッド代はかかりません。

04入院の前に、在宅チームで準備すること

一時入院は、家族が安心して休めることが一番の目的です。病院で在宅と同じケアができるとは限らないので、本人がふだんどう過ごしているかを入院先に具体的に伝えておくと、本人も家族も安心できます。

入院先に伝えておくこと

  • たんの吸引の頻度や、吸引で気をつけていること
  • 体位変換の間隔と、楽な姿勢
  • 人工呼吸器の設定、回路やマスクの種類、ふだんの使い方
  • 胃ろうなどからの栄養の内容と時間、飲み込みの状態
  • 意思を伝える方法(文字盤、意思伝達装置、まばたきなどのサイン)と、その使い方
  • 服薬の内容と時間(薬の効き方に波がある方は、その様子)
  • 退院日と、退院後の訪問看護・訪問介護の再開の予定
前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
入院先の病院は、ご本人のふだんの過ごし方を知りません。吸引のこつや意思の伝え方を看護サマリーに具体的に書いてもらえると、病院の医師や看護師も受け止めやすくなります。私たち主治医の診療情報提供書とあわせて、在宅のケアを入院先へつなげたいと考えています。

05入院が難しいときは、難病患者在宅レスパイト事業

病状などの理由で病院への移動が難しい方のために、東京都は、患者さんの自宅に看護人を派遣する「難病患者在宅レスパイト事業」も行っています。事務局は東京都訪問看護ステーション協会です。

  • 対象:都内に住み、難病の医療費助成の対象の病気にかかっていて、その病気により在宅で人工呼吸器を使っている方(呼吸器の種類や使用時間は問いません)で、介護者の休息などの理由で一時的に在宅での介護が難しくなった方
  • 利用時間:1時間単位で、原則として1か月4時間以内、年度内で合計48時間までです(特別の事由があり、ステーションが派遣できる場合は、1か月5時間以上も可能)
  • 医療保険の訪問看護の代わりに使うことはできません
  • 年度ごとに申請が必要です。その年度に初めて利用する日の10営業日前(土日祝日と年末年始を除く)までに申請します
  • 利用するステーションとあらかじめ調整し、そのステーションあての主治医の指示書が必要です

06ほかのショートステイとの使い分け

家族が休むときに使える主な仕組み
仕組みどこで対象・特徴
都の在宅難病患者一時入院事業都が確保した都内の病院難病で常に医学的な管理が必要な方。医療依存度が高く、ほかの制度を使えない方が優先
都の難病患者在宅レスパイト事業自宅(看護人を派遣)難病で在宅人工呼吸器を使っている方。病院への移動が難しいときに
介護保険の短期入所療養介護医療機関、介護老人保健施設、介護医療院医療や看護、介護を受けられる。連続して利用できるのは30日まで
障害福祉サービスの短期入所(医療型)病院、診療所、介護老人保健施設ALSなどの運動ニューロン疾患の方、遷延性意識障害の方、重症心身障害の方など
医療保険での入院在宅療養中の方の短期の入院を受けている病院受け入れの条件は病院ごとに違うため、主治医やMSWに相談

都の一時入院事業はほかの制度を使えない方が優先されるので、まずは介護保険・障害福祉の短期入所が使えるかも含めて、ケアマネジャー、相談支援専門員、保健所の保健師と一緒に整理しましょう。家族の休息は、困ってから探すのではなく、ケアプランやサービス等利用計画にはじめから入れておくのがおすすめです。

07相談先と、在宅チームを探すときは

東京都では、保健所・保健センターの保健師が難病の方の療養相談に応じ、在宅難病の事業の窓口にもなっています。療養生活の悩みは、東京都難病相談・支援センターや、東京都多摩難病相談・支援室(都立神経病院内)でも相談できます。レスパイトを組み込んだ在宅療養には、医療的なケアに慣れた訪問看護や、ケアマネジャーの力が欠かせません。Med-Tasuki(メドタスキ)では、東京都の訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所を地域ごとに探せます。

参考にした情報

監修者のプロフィール

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
前川 裕貴

Maekawa Hirotaka

脳神経内科専門医・頭痛専門医

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。

2012〜2018年順天堂大学 医学部 医学科
2018〜2020年東京逓信病院 初期臨床研修
2020〜2023年東京大学医学部附属病院 脳神経内科 特任臨床医
2023年〜埼玉精神神経センター 頭痛専門外来
荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
昭和医科大学 脳神経内科 客員講師
2025年〜株式会社Iris Wellness設立

在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。

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監修:前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医)/この記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。受け入れの状況や費用は各施設に、治療の判断は主治医にご相談ください。