病気ごとの在宅療養

COPD の在宅療養:息切れ・急性増悪と在宅酸素

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対象:ケアマネジャー・訪問看護師・薬局の方、ご家族

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)

この記事の監修

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

Med-Tasuki(メドタスキ)は、監修者が開発した、在宅医療・介護の施設どうしが患者さんの受け入れをチャットで相談できる無料のサービスです。近くの施設へまとめて相談できる一括依頼も使えます。

ひとことで言うと

COPD(慢性閉塞性肺疾患)の在宅療養では、吸入薬を正しく続けること、風邪をきっかけにした急性増悪を早く見つけること、息切れに合わせた動き方を身につけることが柱です。進むと在宅酸素療法が加わります。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、長年の喫煙などで肺が傷み、息を吐きにくくなる病気です。ゆっくり進みますが、風邪や肺炎をきっかけに急に悪くなること(急性増悪)があり、そのたびに肺の力が落ちます。在宅チームが増悪を早く見つけ、日々の吸入と動き方を支えることで、自宅での暮らしを長く保てます。

01COPD の在宅療養の柱

吸入薬

毎日続ける

正しい吸い方が効果を決める

急性増悪

早く見つける

風邪のあとの息切れ・痰の変化

禁煙

進行を止める唯一の方法

在宅でも支援できる

  • 吸入薬:気管支を広げる薬を毎日吸います。吸入器の種類が多く、吸い方を間違えると薬が肺に届きません。薬局や訪問看護が定期的に吸い方を確かめます。
  • 急性増悪の早期発見:痰の色が黄色・緑になる、痰が増える、息切れが強くなる、発熱、の変化は増悪のサインです。早く抗菌薬やステロイドを使えば入院を避けられることがあります。
  • 息切れに合わせた動き方:口すぼめ呼吸、動作をゆっくり分ける、休みながら行う、といった工夫を訪問リハビリが指導します。
  • 栄養:COPD の方は呼吸にエネルギーを使うため、やせやすくなります。少量で高カロリーの食事や、栄養補助食品を使います。
  • 感染の予防:インフルエンザ・肺炎球菌・新型コロナの予防接種。手洗い・うがい。風邪をひいた家族との接触に注意。
  • 禁煙:吸っている方は、在宅でも禁煙の支援(薬・声かけ)を続けます。
前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
COPD の患者さんの訪問で私が必ず確かめるのは、吸入器を実際に吸ってもらう場面です。「毎日吸っています」と言われても、吸うタイミングや息止めが違っていて薬が届いていないことがよくあります。薬剤師さんや訪問看護師さんが定期的に見てくれると、薬を増やさずに息切れが軽くなることがあります。

02急性増悪のサインと連絡の目安

COPD の急性増悪のサイン
サイン普段との違い目安
色が黄色・緑に変わる。量が増える。粘る色が変わったら連絡
息切れいつもの動作で息が切れる。休んでも治まらない普段より明らかに強ければその日に連絡
発熱風邪の症状のあとに熱が出る発熱があれば連絡
酸素飽和度(SpO2)普段の値より下がる医師と決めた値を下回ったら連絡
意識ぼんやりする・眠りがち・頭痛二酸化炭素がたまっているサインの可能性。すぐ連絡

SpO2 の目安は患者さんごとに違います。COPD の方は普段から低めのこともあるので、「普段の値」を訪問看護が記録しておきます。

増悪が疑われたときの動き方
  1. Q1.息ができない・唇が紫・意識がもうろう
    はい
    救急車(119番)。同時に訪問看護・医師に連絡
    いいえ
  2. Q2.痰の色が変わった・息切れが強い・発熱
    はい
    その日のうちに主治医に連絡。早めの診察と薬の開始
    いいえ
  3. Q3.風邪の症状だけで、息切れや痰は変わらない
    はい
    訪問看護に報告。数日は毎日様子を確かめる
    いいえ
普段どおりの管理を続ける

酸素の吸いすぎに注意

COPD の方は、苦しいからと酸素を医師の処方より多く吸うと、二酸化炭素がたまって意識がぼんやりすることがあります(CO2 ナルコーシス)。在宅酸素を使っている方は、処方どおりの量を守ることを本人・家族・介護職に伝えます。

03在宅チームの役割分担

COPD の在宅チーム
職種・事業所担うこと
訪問診療医吸入薬の処方と調整、増悪時の早期の治療、在宅酸素の処方と管理、呼吸器科との連携、進行した段階の緩和ケア
訪問看護呼吸・SpO2・痰の観察、吸入の手技の確認、増悪の早期発見と連絡、呼吸法や排痰の指導、在宅酸素の管理
薬局吸入薬の使い方の指導(デバイスごとの違い)、飲み薬との管理、配達
訪問リハビリ呼吸リハビリ(呼吸法・排痰・体力の維持)、息切れの少ない動作の練習
ケアマネジャー入浴・外出の負担の調整、通所での運動、栄養の支援、在宅酸素の住環境
訪問介護動作をゆっくり分ける介助、食事の支援、様子の変化の報告

04在宅酸素療法との付き合い方

COPD が進んで安静時や動いたときに酸素が足りなくなると、在宅酸素療法(HOT)が始まります。機器の設置と管理、火気の禁止、停電への備え、外出時のボンベなど、確かめることが増えます。詳しくは「在宅酸素療法を始める患者さんの在宅チーム」の記事にまとめています。

COPD の在宅療養で確かめること

  • 吸入薬の種類と吸い方。実際に吸ってもらって確かめたか
  • 普段の SpO2 と、連絡する目安の値
  • 痰の色・量の普段の様子
  • 増悪時の連絡先と、早めに使う薬(主治医が事前に処方している場合)
  • 在宅酸素の処方(量・時間)と火気・停電の対策
  • 予防接種の状況
  • 体重の推移と食事の量
  • 禁煙の状況と支援
前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴脳神経内科専門医・頭痛専門医
COPD の増悪は「風邪をひいた数日後」に起きることが多いので、私は「風邪をひいたら、治るまで毎日痰の色を見てください」とお願いしています。訪問看護師さんが「痰が黄色くなった」と連絡をくれた時点で薬を始めると、入院にならずに済むことが多いと感じています。

05進行した段階の緩和ケア

COPD が進むと、治療を尽くしても息切れが続く段階になります。この段階では、息苦しさを和らげる緩和ケア(少量の医療用麻薬を含む)や、急変時にどこまでの治療を望むか(人工呼吸器を使うか)の話し合いが大切になります。がんと違って見通しが立ちにくい病気なので、状態が落ち着いているときに少しずつ話しておきます。

  • 息苦しさの緩和:口すぼめ呼吸、扇風機の風を顔に当てる、姿勢の工夫、少量の医療用麻薬(医師の判断)
  • 急変時の方針:人工呼吸器(マスク式の NPPV・気管挿管)を望むか。増悪のたびに入院するか。本人・家族と話し合い、記録して共有
  • 不安への対応:息苦しさは不安を強め、不安は息苦しさを強めます。訪問看護の声かけ、必要なら薬
  • 家族の支援:息苦しそうな本人を見るご家族の負担は大きいです。休息の時間を組みます

06よくある質問

  • 訪問看護は医療保険?介護保険?:介護保険の認定があれば介護保険です。在宅酸素を使っている方は別表8に当てはまり、医療保険の訪問看護なら週4日以上の訪問ができます。
  • 通所(デイサービス)に行ける?:主治医の許可があれば行けます。呼吸リハビリを行う通所リハビリがあれば、体力の維持に役立ちます。在宅酸素の方はボンベの手配を事業所と相談します。
  • 身体障害者手帳は取れる?:呼吸機能障害で手帳の対象になることがあります。主治医に相談します。
  • 家族が風邪をひいたら?:別の部屋で過ごす、マスク、手洗いを徹底します。本人の痰や息切れを数日は毎日確かめます。

07受け入れ先の探し方

Med-Tasuki(メドタスキ)では、訪問診療・訪問看護・薬局を地域や対応内容(在宅酸素・呼吸器の対応など)で探せます。医療機関・介護事業所の方は、一括依頼で近くの施設にまとめて受け入れを相談できます。

参考にした情報

監修者のプロフィール

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
前川 裕貴

Maekawa Hirotaka

脳神経内科専門医・頭痛専門医

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。

2012〜2018年順天堂大学 医学部 医学科
2018〜2020年東京逓信病院 初期臨床研修
2020〜2023年東京大学医学部附属病院 脳神経内科 特任臨床医
2023年〜埼玉精神神経センター 頭痛専門外来
荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
昭和医科大学 脳神経内科 客員講師
2025年〜株式会社Iris Wellness設立

在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。

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