退院支援・連携

退院前カンファレンスの進め方:誰を呼び、何を決めるか

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対象:病院の MSW・退院支援看護師、ケアマネジャー、訪問看護師・訪問診療医の方

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)

この記事の監修

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

Med-Tasuki(メドタスキ)は、監修者が開発した、在宅医療・介護の施設どうしが患者さんの受け入れをチャットで相談できる無料のサービスです。近くの施設へまとめて相談できる一括依頼も使えます。

ひとことで言うと

退院前カンファレンスは「病状の説明会」ではなく「退院後の1週間を決める会議」です。在宅側の訪問診療・訪問看護・ケアマネジャーを呼び、退院日からの訪問の予定、医療処置の引き継ぎ、急変時の連絡先を決めて終わります。

退院前カンファレンスは、病院と在宅チームが顔を合わせる数少ない機会です。ただ、病状の説明に時間を使い切って、肝心の「退院した翌日に誰が来るのか」が決まらないまま終わることも少なくありません。会議を「退院後の1週間を決める場」にするための進め方をまとめます。

01目的:退院後の1週間を決める

1週間

決める範囲

退院日からの訪問の予定

30〜45分

会議の長さの目安

資料は事前に送る

在宅側

必ず呼ぶ

訪問診療・訪問看護・ケアマネ

退院前カンファレンスで決めることは3つです。「退院日から誰がいつ訪問するか」「医療処置と薬を誰がどう引き継ぐか」「急変したときに誰に連絡し、どこに運ぶか」。病状の説明はこの3つを決めるための材料なので、要点にとどめ、資料で補います。

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
在宅医として退院前カンファレンスに出るとき、私が一番知りたいのは「退院当日と翌日に何が起きうるか」です。病院での経過は資料で読めます。会議では「退院初日の夜、痛みが強くなったら誰がどう動くか」まで決めて終われると、安心して引き受けられます。

02誰を呼ぶか

退院前カンファレンスの参加者
立場参加者役割
病院主治医、病棟看護師、MSW・退院支援看護師、薬剤師(薬が複雑な場合)、リハビリ職(動作の引き継ぎ)病状・処置・薬・動作の引き継ぎ
在宅の医療訪問診療医(または看護師)、訪問看護ステーション退院後の訪問の予定、処置の受け入れ、急変時の方針
在宅の介護ケアマネジャー、必要なら訪問介護・福祉用具ケアプラン、ベッド・用具の準備、介護の体制
薬局在宅対応の薬局(麻薬・無菌調剤・複雑な薬がある場合)薬の供給と管理
本人・家族できるだけ本人と、主に介護する家族希望の確認、役割の理解

訪問診療医が出席できないときは、診療所の看護師や相談員が出席するか、事前に電話で要点を共有します。オンラインでの参加も広がっています。

03事前に送る資料

在宅側に事前に送るもの(会議の2〜3日前まで)

  • 診療情報提供書(病名・経過・治療・見通し)と看護サマリー
  • 処方の内容(退院時処方の日数を含む)
  • 医療処置の一覧(酸素・カテーテル・胃ろう・褥瘡・点滴・麻薬など)と、退院後に誰が行う想定か
  • 日常生活の動作(食事・排泄・移動・入浴)と介助の量
  • 介護保険の認定の状況、暫定ケアプランの有無
  • 本人・家族の希望(在宅で最期まで/入院も考える、など決まっていれば)
  • 退院予定日と、退院日に必要な準備(ベッド・酸素の設置など)

資料が事前にあると、在宅側は「受けられるか」「何が足りないか」を考えて会議に来られます。当日初めて病状を聞く形だと、会議は説明会になり、決めるところまで進みません。

04当日の進め方(型)

  1. 1

    目的と時間を宣言する(1分)

    「退院後の1週間の予定と、急変時の連絡先を決めます。45分で終わります」と司会(MSW か退院支援看護師)が最初に言います。

  2. 2

    病状と見通しの要点(5〜10分)

    主治医から、病名・現在の状態・退院後に起きやすいこと・見通しを要点で。詳細は資料で。

  3. 3

    本人・家族の希望(5分)

    どう暮らしたいか、急変時に病院へ運びたいか、看取りの場所の希望。決まっていなければ「まだ」でよい。

  4. 4

    医療処置と薬の引き継ぎ(10分)

    処置ごとに「退院後は誰が・いつ・何を使って」を確認。薬は退院時処方の日数と、次の処方を誰が出すか。麻薬・無菌調剤は薬局を確認。

  5. 5

    退院後1週間の予定(10分)

    退院日・翌日・1週間の訪問診療・訪問看護・訪問介護・薬局の配達を、カレンダーに書き込む形で決める。

  6. 6

    急変時の連絡先と方針(5分)

    夜間・休日に誰に電話するか(訪問看護→医師の順など)、救急車を呼ぶ場合の基準、戻れる病院。

  7. 7

    確認と役割の読み上げ(5分)

    司会が決まったことを読み上げ、各自の役割と締め切りを確かめる。議事録を全員に送る。

会議で決めきれなかったとき
  1. Q1.受け入れ先(訪問診療・訪問看護・薬局)が決まっていない
    はい
    退院日を動かすか、決まるまで MSW が引き続き探す。一括依頼で同時に打診する
    いいえ
  2. Q2.医療処置の担当が決まらない(家族ができない・訪問看護の回数が足りない)
    はい
    特別訪問看護指示書や別表7・8の該当を確認し、訪問の回数を増やせるか主治医と相談
    いいえ
  3. Q3.本人・家族の希望が固まっていない
    はい
    「まだ決めない」を決める。在宅で折に触れて確かめることをチームで共有
    いいえ
決まったことを議事録にして、退院日までに各自が準備する
前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
会議の最後に「では退院翌日の朝10時に訪問看護、午後に私が伺います」と口に出して確かめることを、私はいつもお願いしています。それだけで、退院直後の「誰も来ない日」がなくなります。ご家族もその一言で表情が変わります。

05退院時共同指導との関係

退院前カンファレンスの多くは、診療報酬の「退院時共同指導」として行われます。病院の医師・看護師と、在宅の医師・看護師・ケアマネジャーなどが、患者さん・家族に対して共同で退院後の療養の指導を行うと、病院と在宅の双方が算定できる仕組みです。要件(参加者の職種・文書の交付など)は MSW が確かめます。オンラインでの参加も一定の条件で認められています。

  • 算定のための会議にしない:要件を満たすことは大事ですが、目的は退院後の段取りです。要件の職種がそろっていても、訪問の予定が決まらなければ意味がありません。
  • 文書:指導の内容を文書で患者さん・家族に渡します。この文書が、在宅チームの共通の資料にもなります。
  • 在宅側の算定:在宅の医療機関・訪問看護ステーションも要件を満たせば算定できます。参加を頼むときに伝えると、出席しやすくなります。

06よくある失敗と対策

退院前カンファレンスの失敗と対策
失敗起きること対策
病状の説明で時間切れ訪問の予定が決まらない資料を事前に送り、説明は要点に。司会が時間を区切る
在宅側が呼ばれていない退院後に「聞いていない」処置が出てくる訪問診療・訪問看護・ケアマネを必ず呼ぶ。出られなければ事前に電話で共有
退院日が近すぎる受け入れ先が決まらないまま退院受け入れ先の見通しが立ってから退院日を決める。急ぐなら同時に複数へ打診
家族が理解できていない退院後に不安で救急車を呼ぶ家族向けに「困ったときの連絡先」を1枚にして渡す
薬の引き継ぎが曖昧退院時処方が切れて薬がない退院時処方の日数と、次の処方の担当・薬局を明記

07受け入れ先の探し方

受け入れ先が決まらないと、カンファレンスの日程も決められません。Med-Tasuki(メドタスキ)の一括依頼では、患者さんの住所と条件を入れて、近くの訪問診療・訪問看護・薬局にまとめて受け入れを相談でき、引き受けた施設とそのままチャットで調整できます。医療機関・介護事業所の方は無料で登録できます。

参考にした情報

監修者のプロフィール

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
前川 裕貴

Maekawa Hirotaka

脳神経内科専門医・頭痛専門医

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。

2012〜2018年順天堂大学 医学部 医学科
2018〜2020年東京逓信病院 初期臨床研修
2020〜2023年東京大学医学部附属病院 脳神経内科 特任臨床医
2023年〜埼玉精神神経センター 頭痛専門外来
荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
昭和医科大学 脳神経内科 客員講師
2025年〜株式会社Iris Wellness設立

在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。

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監修:前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)/この記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。受け入れの状況や費用は各施設に、治療の判断は主治医にご相談ください。