在宅医療の基本

独居の方の在宅療養:見守り・緊急時・鍵の管理

公開|内容の確認:

対象:ケアマネジャー・訪問看護師・訪問介護・地域包括支援センターの方、離れて暮らすご家族

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)

この記事の監修

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

Med-Tasuki(メドタスキ)は、監修者が開発した、在宅医療・介護の施設どうしが患者さんの受け入れをチャットで相談できる無料のサービスです。近くの施設へまとめて相談できる一括依頼も使えます。

ひとことで言うと

一人暮らしでも在宅療養は組めます。要は「誰かが毎日様子を見る仕組み」「倒れたときに気づく仕組み」「駆けつけた人が家に入れる仕組み」の3つです。本人の意思確認と、離れて暮らす家族との連絡の取り決めを最初に行います。

「一人暮らしだから在宅は無理」と言われることがありますが、支える仕組みを組めば、独居の方でも在宅療養は成り立ちます。大切なのは3つ。毎日誰かが様子を見ること、倒れたときに気づけること、駆けつけた人が家に入れること。この3つを軸に、在宅チームの組み立て方をまとめます。

01独居の在宅療養の3つの軸

毎日

誰かが様子を見る

訪問・配食・電話・見守り機器

気づく

倒れたとき

緊急通報・見守りセンサー

入れる

駆けつけた人が

鍵の管理の取り決め

独居の方を支える仕組み
軸手段担当・相談先
毎日の見守り訪問介護・訪問看護の訪問、配食サービス(手渡し)、電話や訪問の見守り、通所ケアマネジャーが週の予定表で「誰も来ない日」をなくす
倒れたときに気づく緊急通報装置(ペンダント型)、人感センサー、電気やガスの使用状況の見守り、新聞や配食の異変市区町村の高齢者福祉の窓口、民間の見守りサービス
駆けつけた人が入れるキーボックス(暗証番号式)の設置、鍵の預け先(家族・近所・事業所)、オートロックの対応ケアマネジャーと家族で決め、関係者に共有
服薬一包化、服薬カレンダー、訪問時の確認、薬剤師の訪問薬局・訪問看護・訪問介護
食事配食、訪問介護の調理・買い物、通所での食事ケアマネジャー
金銭・契約日常生活自立支援事業、成年後見制度社会福祉協議会・地域包括支援センター
前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
独居の患者さんを訪問診療で診るとき、私が最初にケアマネジャーと確かめるのは「1週間の予定表に空白の日がないか」です。訪問看護・ヘルパー・配食・通所を並べて、誰も顔を見ない日が2日続かないように組むと、異変に早く気づけます。

02鍵と緊急時の取り決め

独居の方が倒れて連絡が取れないとき、駆けつけた訪問看護やヘルパーが家に入れなければ、救急隊を呼んで扉を開けることになります。鍵の管理は、在宅療養を始めるときに必ず決めておきます。

鍵と緊急時の取り決め

  • キーボックスを玄関に設置し、暗証番号を関係者(訪問看護・訪問介護・ケアマネ・家族)で共有する
  • オートロックの場合、管理人や管理会社と緊急時の対応を決める
  • 連絡が取れないときの手順:誰が訪問し、何分で入れなければ誰に連絡し、いつ救急・警察を呼ぶか
  • 離れて暮らす家族の連絡先と、連絡がつく時間帯
  • 本人の意思:救急搬送を望むか、延命処置を望むか。書面にして家の目に付く場所に置く
  • かかりつけの病院と、訪問診療医の連絡先を冷蔵庫などに貼る
  • 訪問した人が「いつもと違う」と感じたときの連絡先(訪問看護かケアマネ)

個人情報と鍵の扱い

キーボックスの暗証番号や鍵の所在は、必要な人だけに限って共有し、担当者が替わったら番号を変えます。ヘルパーや訪問看護が鍵を預かる場合は、事業所の規程に沿って記録を残します。

03在宅チームの役割分担

独居の方の在宅チーム
職種・事業所担うこと
訪問診療医定期の診察、病状の見通しの説明、急変時の方針の確認と記録、緊急時の往診
訪問看護体調の観察、服薬の確認、異変の早期発見、緊急時の第一報の窓口になることが多い
訪問介護食事・掃除・買い物・入浴の支援、毎回の様子の記録と報告
ケアマネジャー週の予定表の空白をなくす、見守りと緊急通報の手配、家族との連絡の窓口
地域包括支援センター・民生委員地域の見守り、困りごとの相談、金銭や契約の支援につなぐ
薬局一包化・服薬カレンダー・配達・残薬の確認
配食・見守りサービス手渡しでの安否確認、異変時の連絡
離れて暮らす家族定期の電話・訪問、緊急時の連絡先、意思決定の相談相手

04認知症がある独居の方

認知症のある独居の方の在宅は、服薬・火の元・金銭・徘徊の4つが課題になります。すぐに施設と考える前に、次の工夫でどこまで支えられるかをチームで見立てます。

  • 服薬:一包化と服薬カレンダーに加え、訪問のたびに確認する。飲み忘れが続くなら、訪問の回数を増やすか、薬を減らせないか主治医に相談
  • 火の元:ガスを IH に替える、自動消火装置、ガスの元栓を訪問のたびに確かめる。電気ポットやレンジで済む食事に
  • 金銭:日常生活自立支援事業(社会福祉協議会)で日々の金銭管理を支援。財産の管理が難しければ成年後見制度
  • 徘徊:GPS 機器、地域の見守りネットワークへの登録、近所への声かけ
  • 限界の見極め:本人の安全が保てない(火事の危険、夜間の外出、脱水)ときは、施設やグループホームを検討する。事前に見学しておく
前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
認知症のある独居の患者さんでは、「本人が施設を拒んでいる」と「本人の安全が保てない」がぶつかることがあります。私は、ご本人の気持ちを尊重しつつ、チームで「ここまでは在宅で支える、これが起きたら施設を考える」という線を先に決めておくことを勧めています。線があると、ご家族も決断しやすくなります。

05独居での看取り

独居のまま自宅で最期を迎えることを望む方もいます。訪問の回数を増やし、夜間の訪問看護や見守りを組み、発見までに時間が空く可能性をご本人と離れて暮らすご家族が受け入れていれば、可能です。訪問診療が入っていれば、亡くなった後に医師が診察して死亡診断書を書けるので、警察は関わりません。詳しくは「在宅看取りの流れ」の記事にまとめています。

独居の方の在宅を続けられるか
  1. Q1.毎日誰かが顔を見る予定が組めている
    はい
    次へ
    いいえ
  2. Q2.緊急通報と鍵の取り決めができている
    はい
    次へ
    いいえ
  3. Q3.本人の意思(在宅の希望・急変時の方針)が確かめられ、家族と共有できている
    はい
    在宅を続ける。状態の変化に合わせて訪問を増やす
    いいえ
足りない仕組みを先に整える。整わなければ施設や家族との同居を含めて相談する

06よくある質問

  • 家族が遠方で、何もできない:緊急時の連絡先と意思決定の相談相手になってもらうだけでも大きな支えです。定期の電話と、月1回の訪問を頼みます。
  • 本人が支援を拒む:地域包括支援センターや民生委員が少しずつ関係を作ります。医療の入口(訪問診療・訪問看護)から入ると受け入れられることもあります。
  • 倒れて発見が遅れたら?:その危険があることを本人・家族が理解した上で在宅を選ぶ、という考え方です。危険を減らすのが見守りと緊急通報の役目です。
  • 緊急通報装置は誰が用意する?:市区町村の高齢者福祉の事業で貸し出されることがあります。民間のサービスもあります。ケアマネジャーが市区町村に確かめます。

071週間の予定表の例

独居・要介護2・服薬管理が必要な方の1週間の例
曜日午前午後・夜
月訪問介護(食事・服薬の確認)配食(手渡し)
火通所(入浴・食事・服薬)—
水訪問看護(体調・服薬・皮膚)配食
木通所—
金訪問介護(買い物・掃除)配食
土訪問診療(2週に1回)または家族の電話配食
日家族の訪問または電話。見守りサービス—

毎日誰かが顔を見るか声を聞く形にし、見守り機器で夜間を補います。

08受け入れ先の探し方

Med-Tasuki(メドタスキ)では、訪問診療・訪問看護・訪問介護・居宅介護支援事業所を地域ごとに探せます。医療機関・介護事業所の方は、一括依頼で近くの施設にまとめて相談できます。

参考にした情報

監修者のプロフィール

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
前川 裕貴

Maekawa Hirotaka

脳神経内科専門医・頭痛専門医

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。

2012〜2018年順天堂大学 医学部 医学科
2018〜2020年東京逓信病院 初期臨床研修
2020〜2023年東京大学医学部附属病院 脳神経内科 特任臨床医
2023年〜埼玉精神神経センター 頭痛専門外来
荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
昭和医科大学 脳神経内科 客員講師
2025年〜株式会社Iris Wellness設立

在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。

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監修:前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)/この記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。受け入れの状況や費用は各施設に、治療の判断は主治医にご相談ください。