ひとことで言うと
自宅でのリハビリには、訪問リハビリ事業所からと訪問看護ステーションからの2通りがあります。要介護認定の有無と、別表7に当たるかで使う保険が変わります。
パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、ALSなどの神経難病では、通院してリハビリを続けることが難しくなる時期があります。自宅でリハビリを受ける方法は1つではなく、どこから誰が来るかによって、使う保険や手続きが変わります。この記事では、訪問リハビリと訪問看護ステーションからのリハビリの違いと、保険の使い分けを整理します。
01自宅でリハビリを受ける2つの方法
どちらも「自宅に理学療法士などが来る」点は同じですが、どこから来るか、指示を出す医師、介護保険の支給限度額との関係が違います。神経難病の方では、この違いが費用やサービスの組み立てに大きく影響します。
| 比べる点 | 訪問リハビリ(訪問リハビリテーション) | 訪問看護ステーションからのリハビリ |
|---|---|---|
| 来る人 | 病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 | 訪問看護ステーションの理学療法士など |
| 指示を出す医師 | その施設の医師(リハビリの計画にも関わる) | 主治医(訪問看護指示書が要る) |
| 看護との関係 | ― | 訪問看護の一部。看護の一環としてのリハビリで、看護職員の代わりに訪問するという位置づけ。看護職員も利用開始時や状態が変わったときなどに定期的に訪問して状態を評価し、訪問看護計画書・報告書を一緒に作る |
| 介護保険の支給限度額 | 介護保険で使うときは、限度額の中に入る | 医療保険の訪問看護になるときは、限度額を使わない |
02どの保険になるか:認定と別表7で決まる
使う保険は、「要介護認定があるか」と「別表7(厚生労働大臣が定める疾病等)に当たるか」で決まります。介護保険の対象は、65歳以上の方と、40〜64歳で特定疾病(パーキンソン病関連疾患、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、ALSなど)の方です。
| 本人の状況 | 訪問看護ステーションから | 訪問リハビリ事業所から |
|---|---|---|
| 要介護認定あり・別表7に当たる | 医療保険 | 介護保険 |
| 要介護認定あり・別表7に当たらない | 介護保険 | 介護保険 |
| 要介護認定なし・別表7に当たる | 医療保険(週4日以上の利用もできる) | 医療保険 |
| 要介護認定なし・別表7に当たらない | 医療保険 | 医療保険 |
「要介護認定なし・別表7に当たらない」には、40歳未満の方や、介護保険の対象にならない病気の方が入ります。要介護認定のない方は、通院が難しければ医療保険の訪問リハビリを使えることがあります。
要介護認定のある方が訪問リハビリ事業所から受けるリハビリは、原則として介護保険です。医療保険の訪問リハビリ(在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料)は、急に状態が悪くなって一時的に頻回のリハビリが要るときに、6か月に1回・14日間に限って使えます(2026年9月時点)。
- 別表7に当たる神経難病の例:ALS、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症、多発性硬化症、重症筋無力症、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病)など。
- パーキンソン病が別表7に当たるのは、ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上で、生活機能障害度が2度または3度の場合です。軽い時期は当たりません。
- 人工呼吸器を使っている状態の方も、病名にかかわらず別表7に当たります。
急に状態が悪くなったとき
別表7に当たらない方でも、状態が急に悪くなり主治医が特別訪問看護指示書を出した期間は、訪問看護が医療保険になります。リハビリだけでなく、看護の量を一時的に増やしたいときの選択肢として知っておくと役立ちます。
03別表7に当たる方で気をつけること
- ケアプランへの入り方:最初の表のとおり、同じ理学療法士の訪問でも、訪問看護ステーションからか訪問リハビリ事業所からかで、介護保険の支給限度額を使うかどうかが変わります。ケアマネジャーと訪問看護ステーションで、どちらで組むかを最初にすり合わせます。
- 難病の医療費助成:医療保険の訪問看護のほか、介護保険の訪問看護・訪問リハビリも、指定医療機関が行い介護保険の支給限度額内であれば助成の対象です(横浜市の案内による。詳しくはお住まいの窓口で)。
外来のリハビリを続けている方は注意
要介護認定のある方が介護保険の訪問リハビリや通所リハビリを始めると、同じ病気についての医療保険の疾患別リハビリ(外来のリハビリなど)は、原則として翌月から受けられなくなります。別の施設で介護保険のリハビリを始める場合は、移るための期間として翌々月まで、月7単位まで併用できます(2026年9月時点)。外来のリハビリを続けたいかを、本人・主治医と先に確かめましょう。

どちらの事業所から来てもらうかは、保険の区分だけで決めず、何のためのリハビリかを先にチームで話してもらえると、主治医も指示を出しやすくなります。外来のリハビリを続けたいかどうかも、切り替える前に教えてください。
04神経難病の訪問リハビリで取り組むこと
厚生労働省の通知では、医療保険の訪問リハビリの内容として、体位変換、起き上がりや離床の練習、立ち上がりの練習、食事や排泄の練習、生活に合わせる練習、言葉や聞こえに関する指導などが挙げられています。神経難病では、次のような場面でリハビリ職が力を発揮します。
| 場面 | 取り組むこと |
|---|---|
| 動くこと・転ばないこと | 寝返り、起き上がり、立ち上がり、歩き方の練習と、手すりや家具の配置の見直し |
| 呼吸 | 姿勢の工夫や、たんを出しやすくするための介助の方法 |
| 飲み込み | 食べる姿勢や食事の形の相談(言語聴覚士が中心) |
| 話す・伝える | 声が出にくくなったときの伝え方、文字盤や意思伝達装置のスイッチ選び |
| 道具と住まい | 車いす、歩行器、介護ベッド、移乗用のリフトなどの選び方と、住宅改修の相談 |
| ご家族への支え | 介助の方法を伝え、ご家族の腰痛やけがを防ぐ |
運動の内容や量は、病気の種類や時期によって合う・合わないがあります。主治医の意見を聞きながら、リハビリ職が決めていきます。
05進行に合わせて目標を見直す
神経難病のリハビリの目標は、「元に戻す」ことだけではありません。今の暮らしをできるだけ長く続けること、次に来る変化に早めに備えることも大切な目標です。
- 「家の中を歩ける」から「安全に車いすへ移れる」へ、など、状態に合わせて目標を書き換えます。
- 飲み込みや呼吸、会話の変化は、リハビリ職が最初に気づくことがあります。気づいたことを主治医・訪問看護・ケアマネジャーに早めに伝える流れを決めておきます。
- 胃ろうや人工呼吸器を使い始めるときは、姿勢、移乗、外出の方法を見直す機会です。
- 介護保険の区分変更や、障害福祉サービスの補装具(車いす・意思伝達装置など)の申請が必要になる時期を、チームで見越します。

神経難病のリハビリでは、「できなくなったこと」よりも「これからも続けたいこと」を目標に置いてもらえると、ご本人の張り合いにつながりやすいと考えています。目標を書き換えたときは、主治医にもひと言知らせてください。次の備えを考える大事な材料になります。
06依頼の前にチームで確かめること
訪問リハビリを依頼する前に確かめること
- 保険の区分:年齢、要介護認定の有無、病名と重症度(別表7に当たるか)
- 目的:何のためのリハビリか(転倒を防ぐ、飲み込み、福祉用具の選び方など)を、主治医とケアマネジャーで話し合ったか
- 頻度:週に何回くらい必要か
- 職種:飲み込みや会話の支援が中心なら、言語聴覚士が訪問できるか(在籍しているかどうかは事業所によって違う)
- 情報の共有:訪問看護と訪問リハビリを両方使う場合や、複数の事業所が関わる場合に、目標と進み具合を共有する方法を決めたか
07事業所を探すとき
神経難病の方のリハビリを受け入れられるか、言語聴覚士が訪問できるかは、事業所ごとに違います。Med-Tasuki(メドタスキ)では、訪問看護ステーションや訪問診療クリニックを地域ごとに探せるほか、一括依頼で近くの複数の施設へまとめて相談できます。
参考にした情報
- 厚生労働省「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について(令和8年3月27日)
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日保発0305第19号)
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」医科点数表(令和8年3月5日保医発0305第6号)
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第259回)資料4「訪問リハビリテーション」
- 厚生労働省「平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について」(訪問看護ステーションにおける理学療法士等による訪問の見直し)
- 厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」
- 横浜市「特定医療費(指定難病)助成制度」
監修者のプロフィール

Maekawa Hirotaka
脳神経内科専門医・頭痛専門医
地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者
脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。
Med-Tasukiを開発した理由を読む在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。