ひとことで言うと
対象の難病の方は、身体障害者手帳がなくても、区市町村が必要と認めれば、たん吸引器などの日常生活用具の給付を受けられます。手帳は病名ではなく障害の状態で決まります。
神経難病の方の在宅療養では、たん吸引器や特殊寝台など、暮らしを支える道具が必要になる場面がたくさんあります。「身体障害者手帳がないと補助は受けられない」と思われがちですが、対象の難病の方は、手帳がなくても障害福祉の制度で道具の給付を受けられる場合があります。
この記事では、難病の方が使える障害福祉の制度、日常生活用具の中身と申請の流れ、身体障害者手帳の取り方をまとめます。用具の種類や条件は区市町村ごとに違うため、例として品川区の案内を紹介します。
01難病の方は手帳がなくても障害福祉を使える
2013年4月から、障害者総合支援法の対象に難病等が加わりました。対象の病気は、その後も見直しが続いています。
376疾病
障害者総合支援法の対象の病気
2025年4月から。指定難病はすべて含まれます
手帳なしで
障害福祉の支援を使える
区市町村が必要と認めた場合
区市町村
申請の窓口
障害福祉の窓口に、対象の病気にかかっていることが分かる証明書(診断書など)を持って行きます
使える支援は次のとおりです。指定難病の方に交付される「指定難病登録者証」も、福祉の支援を受けるときに使えます。
- 障害福祉サービス:居宅介護、重度訪問介護、短期入所、生活介護、就労支援など
- 相談支援:相談支援専門員がサービスの計画をつくります
- 補装具:車いす、意思伝達装置など
- 地域生活支援事業:日常生活用具の給付、移動支援など
居宅介護や重度訪問介護などを使うには、障害支援区分の認定と支給の決定を受けます(訓練系・就労系のサービスなどは区分の認定が要りません)。厚生労働省の認定マニュアルでは、難病の方のように症状が日や時間で重くなったり軽くなったりする場合は、調査の日の様子だけでなく、支援がより必要な状態をもとに判断することになっています。ふだんの様子を、調査の前にご家族や訪問看護師から伝えておくとよいでしょう。
なお、意思伝達装置や車いすは、日常生活用具ではなく「補装具」として扱われます。2013年4月から、難病の方も補装具費の支給の対象になりました。補装具も区市町村の窓口に申請します。
02日常生活用具とは
日常生活用具の給付は、区市町村が行う事業です(障害者総合支援法の地域生活支援事業)。障害のある方や対象の難病の方に、暮らしを楽にするための用具を給付または貸し出します。国は用具を次の6つに分けています。
| 種類 | 用具の例 |
|---|---|
| 介護・訓練支援用具 | 特殊寝台、特殊マットなど |
| 自立生活支援用具 | 入浴補助用具など |
| 在宅療養等支援用具 | 電気式たん吸引器など |
| 情報・意思疎通支援用具 | 人工喉頭など |
| 排泄管理支援用具 | ストーマ装具など |
| 居宅生活動作補助用具 | 住宅改修を伴うもの |
用具は、安全に使えて実用性があること、暮らしの困りごとを改善して自立や社会参加を助けること、作るのに障害についての専門的な知識や技術が要り、一般の生活用品として普及していないこと、の3つをすべて満たすものとされています。
どの用具を対象にするか、対象者の条件、自己負担の額は、区市町村が決めます。同じ用具でも、住んでいる区市町村によって条件が違うことがあります。
03難病の方が対象になる用具の例(品川区)
品川区の案内(2026年4月1日現在)では、次の用具で「難病」の方が対象に入っています。ここでいう難病の方は、法令で定められた病気で、手帳を持つ方と同じ程度の状態の方、または医師の意見書で必要と認められた方です。
- 電気式たん吸引器、吸入器(ネブライザー)、動脈血中酸素飽和度測定器(パルスオキシメーター)
- 特殊寝台、エアーパッド、体位変換器、移動用リフト
- 入浴補助用具、便器、特殊尿器
- 歩行支援用具、移乗・移動支援用具
- 人工呼吸器を使う方の自家発電装置・ポータブル電源・DC/ACインバーター(品川区では、災害時の個別支援計画をつくった方などが対象)
- 居宅生活動作補助用具(住宅改修)
用具ごとに、年齢の条件、給付の上限額、次に給付を受けられるまでの年数(耐用年数)が決まっています。ほかの区市町村では種目や条件が違うので、必ずお住まいの窓口で確かめてください。
04申請の流れと注意点
- 1
買う前に窓口へ相談する
品川区は「購入前にご相談ください」と案内しています。先に買ってしまう前に、区市町村の障害福祉の窓口に相談します。
- 2
申請書・見積書などを出す
申請書と、事業者の見積書などを出します。難病の方は、病気の証明や医師の意見書が必要になることがあります。
- 3
給付の決定
区市町村が審査し、給付が決まると給付券などが届きます。
- 4
事業者から受け取る
品川区では、区と協定を結んだ事業者から用具が納品されます。自己負担は区市町村が決めていて、品川区は原則1割(所得に応じた上限あり)です。
介護保険の福祉用具との関係
障害福祉のサービスは、似たサービスが介護保険にある場合は介護保険が優先するのが原則です(障害者総合支援法第7条)。特殊寝台や移動用リフトなど、介護保険の福祉用具貸与と重なる用具の扱いは、区市町村の窓口とケアマネジャーで確かめておきましょう。
05吸引器が急いで必要なとき(東京都の貸し出し)
日常生活用具の給付には、申請から決定まで時間がかかることがあります。退院が決まってたんの吸引が必要な方は、入院中から準備を始めるのが安心です。
東京都には、在宅療養中の難病の方に吸入器・吸引器を貸し出す「在宅難病患者医療機器貸与事業」があります。難病医療費等助成の対象の病気が主な原因で、主治医の同意があり、貸し出しが必要と認められた方が対象です。ただし、日常生活用具の給付などほかの制度が優先です。問い合わせ先は、特別区・八王子市・町田市にお住まいの方は保健所・保健センター等、それ以外の多摩・島しょ地域の方は都の保健所です。

吸引器などの用具は、必要になってから申請すると、退院に間に合わないことがあります。医師の意見書が要るときは、入院中や受診の機会に早めに頼んでもらえると、医師も落ち着いて書けます。
06身体障害者手帳の対象と取り方
身体障害者手帳は、病名ではなく、体の機能の障害の種類と程度で交付が決まります。対象は、視覚、聴覚、平衡機能、音声・言語機能、そしゃく機能、肢体不自由、心臓、じん臓、呼吸器、ぼうこう・直腸、小腸、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能、肝臓の13種類の障害です。神経難病の方では、症状に応じて、肢体不自由や音声・言語機能障害、呼吸器機能障害などで申請を考えることがあります。
- 等級は1級から7級まで(7級の障害が1つだけでは手帳の対象になりません)
- 窓口:お住まいの区市町村の障害福祉の窓口。東京都では、交付まで通常1か月ほどです
- 障害の程度が変わると見込まれるときは、再認定の時期(交付から1年以上5年以内)が指定されます
申請に要るもの(東京都)
- 身体障害者福祉法第15条の指定を受けた医師が書いた診断書・意見書(作成から1年以内)
- 写真
- 交付申請書
- マイナンバーの記入と本人確認書類
手帳があると、日常生活用具の対象になる種目が広がるなど、区市町村のサービスが使いやすくなることがあります。受けられるサービスは区市町村によって違うため、窓口で確かめてください。進行する病気では、状態が変わったら等級の変更も考えましょう。

手帳の診断書は、病名ではなく、いまの体の機能の障害を書くものです。進行する病気では、状態が変わると等級も変わりえます。できないことが増えてきたと感じたら、早めに医師に伝えてください。
07制度の違いを整理する
| 制度 | 何のためのものか | 窓口 |
|---|---|---|
| 難病医療費助成(難病法) | 指定難病の医療費の自己負担を軽くする | 都道府県・指定都市(東京都は区市町村) |
| 障害福祉サービス・日常生活用具・補装具(障害者総合支援法) | 暮らしの支援と道具。対象の難病なら手帳がなくても使える | 区市町村 |
| 身体障害者手帳(身体障害者福祉法) | 病名ではなく障害の状態で交付される | 区市町村 |
| 介護保険の福祉用具 | 要介護・要支援の認定を受けた方が、貸与や購入の補助を受ける | ケアマネジャーに相談 |
08在宅チームで準備を進めるために
用具の準備は、ケアマネジャー・相談支援専門員・訪問看護師・主治医が、それぞれの窓口の手続きを分担して進めることになります。Med-Tasukiでは、東京都の訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所を地域ごとに探せるほか、一括依頼で近くの施設へまとめて受け入れを相談できます。
参考にした情報
- 厚生労働省「障害者総合支援法の対象疾病(難病等)」
- 厚生労働省 リーフレット「障害者総合支援法の対象となる難病が追加されます」(令和7年4月1日から適用)
- 厚生労働省「障害者総合支援法対象の難病患者等に対する障害支援区分認定マニュアル」(令和7年4月)
- 厚生労働省「日常生活用具給付等事業の概要」
- 厚生労働省「障害福祉サービスと介護保険サービスとの関係」
- 東京都心身障害者福祉センター「身体障害者手帳について」
- 品川区「日常生活用具・給付種目など」
- 品川区「日常生活用具の給付」
- 東京都保健医療局「難病患者さんへの支援の御案内(支援機関支援者用)」令和8年4月15日版
- 難病情報センター「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」(指定難病登録者証)
監修者のプロフィール

Maekawa Hirotaka
脳神経内科専門医・頭痛専門医
地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者
脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。
Med-Tasukiを開発した理由を読む在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。