神経難病|連携と意思決定

難病のケアプラン|神経難病を担当するケアマネが押さえる制度・医療連携・進行への備え

公開|内容の確認:

対象:ケアマネジャーの方(訪問看護師・MSW・相談支援専門員の方も)

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)

この記事の監修

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

Med-Tasuki(メドタスキ)は、監修者が開発した、在宅医療・介護の施設どうしが患者さんの受け入れをチャットで相談できる無料のサービスです。近くの施設へまとめて相談できる一括依頼も使えます。

ひとことで言うと

難病のケアプランは、医療保険・難病の医療費助成・障害福祉も含めて組み立てます。主治医・訪問看護と密に連携し、病気が進むことを見越して早めに準備します。

パーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症などの神経難病の方を担当すると、介護保険のほかに医療保険や難病の医療費助成、障害福祉サービスが重なり、医療との連携の比重も大きくなります。この記事では、神経難病の方のケアプランをつくるときに、ケアマネジャーが押さえておきたいことをまとめます。

01難病のケアマネジメントが、ほかと違うところ

  • 使う制度が多い:介護保険、医療保険、難病の医療費助成、障害福祉サービス、自治体の難病の事業が重なります。
  • 医療の比重が大きい:病気によっては、訪問看護が介護保険ではなく医療保険になります。
  • 病気が進む:いまの状態だけでなく、数か月先に必要になりそうな支援を見越して準備します。
  • 症状に波がある:薬の効き方や時間帯、日によって、できることが大きく変わる方がいます。
  • 意思を伝えにくくなる:話すこと・書くことが難しくなる前に、意思を伝える手段と、大事な選択についての本人の考えを確かめておきます。
  • 家族の介護が長く続く:家族が休む仕組みを、はじめから計画に入れます。

02最初に整理する制度

神経難病の方で重なる主な制度
制度ケアマネが押さえること
介護保険65歳以上の方と、40〜64歳で特定疾病(ALS、パーキンソン病関連疾患、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症など)の方が使える。筋ジストロフィーや多発性硬化症などは特定疾病に入らず、40〜64歳の方は使えない
訪問看護の保険別表7(厚生労働大臣が定める疾病等)の病気の方は、要介護認定を受けていても医療保険。パーキンソン病は、ホーエン・ヤールの重症度分類ステージ3以上で、生活機能障害度が2度または3度の方が当たる
難病の医療費助成指定難病で認定を受けた方は、特定医療費(指定難病)受給者証と自己負担上限額管理票を持っている。介護保険の一部のサービスも助成の対象(表の下)
人工呼吸器などを付けている方難病の医療費助成の自己負担の上限は、所得にかかわらず月1,000円
障害福祉サービス難病の方も対象で、2025年4月からは376の病気が対象。障害者手帳がなくても使える。介護保険の支給限度額で足りない分や、介護保険にない支援は、市区町村の判断で併せて使えることがある

難病の医療費助成の対象になる介護保険のサービスは、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導(介護予防を含む)と介護医療院サービスです(都道府県などの指定を受けた事業所の場合)。

受給者証の病名・有効期間・自己負担の上限月額は、アセスメントのときに確かめておきましょう。有効期間は原則1年以内で、更新の手続きが要ります。更新を忘れると助成が受けられない期間ができるため、時期を本人・家族と共有しておくと安心です。

03ケアプランに医療をどう位置づけるか

居宅介護支援の運営基準(第13条)には、医療との連携について次の決まりがあります。神経難病の方では、どれも日常的に関わってきます。確認のリストにすると次のとおりです。

医療との連携で確かめること(運営基準第13条から)

  • 訪問看護や通所リハビリテーションなどの医療サービスを本人が希望するとき・必要なときに、本人の同意を得て、主治の医師などの意見を求めたか
  • 意見を求めた主治の医師などに、つくったケアプランを渡したか
  • ケアプランに入れた医療サービスに、主治の医師などの指示があるか
  • 介護保険の対象外のサービス(医療保険の訪問看護、障害福祉サービス、保健所の支援、地域の活動など)も、暮らし全体を支える観点からケアプランに位置づけたか
  • サービス事業所から聞いた服薬の状況や口腔機能などの情報のうち必要なものを、本人の同意を得て主治の医師や薬剤師に伝えたか

別表7の病気の方の訪問看護は医療保険なので、介護保険の区分支給限度基準額には入りません。それでもケアプランに書き、サービス担当者会議には訪問看護師にも入ってもらいます。訪問看護は、病状の変化や薬の効き方を一番近くで見ている職種です。また、居宅介護支援の開始のときには、入院したら担当ケアマネジャーの氏名と連絡先を病院に伝えるよう、本人・家族にお願いしておくことになっています。神経難病の方は、肺炎や転倒で急に入院することがあるため、特に大事です。

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
ケアプランを受け取ると、診察室では見えない暮らし全体がわかり、診療の組み立てに役立ちます。意見を求めるときは、何を判断してほしいのかを一言添えてもらえると、私たち医師も答えやすくなります。

04症状の変動と、病気の進行への備え

パーキンソン病では薬の効いている時間(オン)と切れている時間(オフ)で動ける範囲が大きく変わることがあり、多系統萎縮症や脊髄小脳変性症では転倒や飲み込みの問題が少しずつ進みます。認定調査や主治医意見書で、状態の悪いときの様子が伝わるようにしておくことが、必要なサービスを確保する第一歩です。

  • 認定調査の日に向けて:調査の日の様子だけでなく、オフの時間や夜間の様子、転倒の回数などを、家族やサービス事業所と一緒に書き出して伝えます。
  • 区分変更を早めに:状態が変わって今の要介護度では足りなくなったら、更新を待たずに区分変更の申請を検討します。
  • 福祉用具の例外給付:要支援・要介護1の方は、車いすや特殊寝台などの貸与が原則として対象外です。ただし、医師の医学的な所見にもとづき、サービス担当者会議などを通じたケアマネジメントで特に必要と判断され、市区町村が書面などで確かめた場合は、例外的に貸与を受けられます。「病気などの原因で状態が変動しやすく、日によって、または時間帯によって対象の状態になる」場合がその一つで、例としてパーキンソン病の薬によるオン・オフが挙げられています。
  • 先の選択を見越す:飲み込み(胃ろう)、呼吸(人工呼吸器)、意思を伝える手段(意思伝達装置)は、必要になってから準備すると間に合わないことがあります。主治医から見通しを聞き、本人の考えを確かめる機会を早めにつくります。意思伝達装置などの補装具は障害者総合支援法の制度で、申請から支給まで時間がかかることがあります。
前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
胃ろうや人工呼吸器、意思を伝える手段の話は、限られた診察の時間では切り出しにくいこともあります。ケアマネさんが本人の気がかりや暮らしの変化に気づいたら、ぜひ教えてください。本人の考えを確かめる機会を、早めに一緒につくりたいと考えています。

05医療と福祉の連携の組み立て

連携先と、主に相談すること
連携先役割・相談すること
主治医脳神経内科の専門医と、訪問診療の在宅医の両方が関わる場合は、どちらに何を相談するかを整理しておく
訪問看護医療保険でも介護保険でも、ケアプランの中心的な連携先。特別訪問看護指示書が出て一時的に医療保険に切り替わる期間は、開始日と終了日を共有してもらう
保健所の保健師東京都では、家庭訪問や電話、面談で難病の方の療養の相談に応じ、在宅難病の事業の窓口にもなっている
相談支援専門員障害福祉サービスを併せて使うときは、サービス担当者会議に参加してもらい、介護保険との分担を一緒に決める
難病相談支援センター都道府県・指定都市に置かれ、本人・家族・関係者からの療養生活の相談に応じ、情報の提供や助言をしている

モニタリングは少なくとも月1回、本人に面接して行います。神経難病の方は、前回の訪問から状態が変わっていることも少なくありません。変化に気づいたら、サービス担当者会議を開いてケアプランを見直します。

06家族の休息と、急な変化・災害への備え

  • 家族の休息:介護保険の短期入所療養介護、障害福祉の短期入所(医療型はALSなどの運動ニューロン疾患の方も対象)、自治体の難病の事業(東京都の在宅難病患者一時入院事業など)を組み合わせて、休める予定をあらかじめ入れておきます。
  • 急な変化のとき:夜間・休日にまず誰に連絡するか(訪問看護、在宅医、救急)の順番を、家族とサービス事業所で共有します。
  • 入院と退院:入院したら病院に在宅での様子を伝え、退院前カンファレンスに参加して、退院後のサービスを組み直します。
  • 災害への備え:人工呼吸器や吸引器を使う方は、停電のときの電源、避難の方法、連絡先を、主治医・訪問看護・医療機器の業者と一緒に確かめておきます。東京都には、在宅で人工呼吸療法を行う医療機関が、難病の方に非常用電源(自家発電装置・無停電電源装置・蓄電池)を無償で貸し出すときの購入費を補助する事業があります。申請するのは医療機関なので、主治医の医療機関に相談します。

07連携先を探すときは

神経難病の方の在宅療養は、医療的なケアに慣れた訪問看護や訪問診療との連携で支えられます。対応できる医療処置や夜間の体制は事業所によって違うため、早めに候補を探しておくと安心です。Med-Tasuki(メドタスキ)では、東京都の訪問看護ステーションや訪問診療クリニックを地域ごとに探せます。医療機関・介護事業所の方は、一括依頼で近くの施設にまとめて相談することもできます。

参考にした情報

監修者のプロフィール

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
前川 裕貴

Maekawa Hirotaka

脳神経内科専門医・頭痛専門医

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。

2012〜2018年順天堂大学 医学部 医学科
2018〜2020年東京逓信病院 初期臨床研修
2020〜2023年東京大学医学部附属病院 脳神経内科 特任臨床医
2023年〜埼玉精神神経センター 頭痛専門外来
荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
昭和医科大学 脳神経内科 客員講師
2025年〜株式会社Iris Wellness設立

在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。

Med-Tasukiを開発した理由を読む

医療機関・介護事業所の方へ

受け入れの相談を、電話とFAXからチャットへ

Med-Tasuki(メドタスキ)は、在宅医療・介護の施設どうしが患者さんの受け入れをチャットで相談できる無料のサービスです。近くの施設へまとめて相談できる一括依頼も使えます。

あわせて読みたい記事

連携と意思決定

神経難病の退院調整チェックリスト|制度・医療機器・たんの吸引・災害への備えまで退院前に確かめること

神経難病の退院では、病気が進むことを見越した準備が要ります。制度・医療機器・たんの吸引・意思を伝える手段・災害・家族の休息を、退院前にチームで確かめましょう。

続きを読む

連携と意思決定

神経難病の意思決定支援|人工呼吸器・胃ろうの選択をチームで支えるために

人工呼吸器や胃ろうをどうするかは、十分な説明を受けた本人がチームと繰り返し話し合って決めるのが基本です。在宅チームは結論を急がせず、決める過程と決めた後の暮らしを支えます。

続きを読む

全体像

神経難病の在宅療養ガイド:訪問看護・保険・支援制度の全体像

神経難病の在宅療養は、医療保険・介護保険・難病医療費助成・障害福祉の4つの制度を組み合わせて支えます。病名で訪問看護の保険が変わる点と、進行を見越した準備が要です。

続きを読む

制度とお金

別表7(厚生労働大臣が定める疾病等)とは:対象の病気と訪問看護で変わること

別表7に当たる方は、要介護認定があっても訪問看護は医療保険になり、週4日以上・1日複数回・複数の訪問看護ステーションの利用ができます。

続きを読む

連携ガイドの記事一覧へ

監修:前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)/この記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。受け入れの状況や費用は各施設に、治療の判断は主治医にご相談ください。