病気ごとの在宅療養

脳卒中後の在宅療養:訪問リハビリと再発予防

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対象:ケアマネジャー・訪問看護師・訪問リハビリの方、病院の退院支援看護師、ご家族

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)

この記事の監修

前川 裕貴

脳神経内科専門医・頭痛専門医

荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

Med-Tasuki(メドタスキ)は、監修者が開発した、在宅医療・介護の施設どうしが患者さんの受け入れをチャットで相談できる無料のサービスです。近くの施設へまとめて相談できる一括依頼も使えます。

ひとことで言うと

脳卒中(脳梗塞・脳出血)のあとの在宅療養は、回復期リハビリ病院からの退院で始まることが多く、訪問リハビリで生活の動作を保つこと、血圧と抗血栓薬の管理で再発を防ぐこと、飲み込みと誤嚥性肺炎に気をつけることが柱です。

脳卒中のあと、回復期リハビリテーション病院での数か月のリハビリを経て自宅に戻る方は多くいます。退院はゴールではなく、在宅で動作を保ち、再発を防ぎ、誤嚥性肺炎を避ける長い療養の始まりです。在宅チームの役割分担と、制度の使い方をまとめます。

01脳卒中後の在宅療養の柱

訪問リハ

生活の動作を保つ

医療保険か介護保険

血圧

再発予防の要

家庭での測定と記録

飲み込み

誤嚥性肺炎を防ぐ

食事の形態と口腔ケア

脳卒中の後遺症は、手足の麻痺、言葉の障害(失語・構音障害)、飲み込みの障害、注意や記憶の障害(高次脳機能障害)、感情のコントロールの変化など、人によって組み合わせが違います。在宅療養では、病院で回復した力を落とさないことと、再発を防ぐことが同時に求められます。

前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
脳卒中のあとに自宅へ戻った方は、退院直後は張り合いがあって動くのですが、数か月すると外に出なくなり、動作が落ちていくことがあります。私は「病院でできていたことを家でも続けられているか」を訪問のたびに聞き、訪問リハや通所で体を動かす機会を保つことを大切にしています。

02訪問リハビリの仕組み

自宅でのリハビリには、「訪問リハビリテーション」(病院・診療所・老健から理学療法士などが訪問)と、「訪問看護ステーションからのリハビリ職の訪問」の2つの形があります。どちらも医師の指示が要り、介護保険の認定がある方は介護保険が優先です。

自宅でのリハビリの2つの形(2026年9月時点)
訪問リハビリテーション訪問看護ステーションのリハビリ
誰が来る病院・診療所・老健の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士訪問看護ステーションの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
指示訪問リハの事業所の医師の指示(かかりつけ医の情報提供が要る)主治医の訪問看護指示書
保険介護保険が優先。認定がなければ医療保険介護保険が優先。認定がなければ医療保険
特徴リハビリ専門の事業所。医師の関わりが近い看護師の訪問と組み合わせやすい。時間は20分単位

介護保険の訪問リハビリは、原則として通所リハビリでは難しい理由があるときに使う、という考え方があります。ケアマネジャーが主治医と相談して決めます。

  • 生活の動作の練習:トイレ・入浴・着替え・台所など、自宅の環境で実際の動作を練習します。病院のリハビリと違い、その家の段差や手すりに合わせられるのが利点です。
  • 言語聴覚士:言葉の障害と飲み込みの障害のリハビリ。食事の形態や姿勢の助言も行います。
  • 福祉用具・住宅改修:手すり・スロープ・ベッド・車いすを、リハビリ職の助言をもとにケアマネジャーが手配します。住宅改修は介護保険で一定額まで補助があります。
  • 通所リハビリとの組み合わせ:外に出て人と関わる機会にもなるので、通える方は通所を軸にし、自宅の動作の練習は訪問で補う形が多いです。

03再発を防ぐ

脳卒中の再発予防で在宅チームが見ること
項目内容担当
血圧家庭で毎日測り記録する。目標は主治医が決める本人・家族・訪問看護
抗血栓薬脳梗塞の再発を防ぐ薬(抗血小板薬・抗凝固薬)。飲み忘れと、出血(歯ぐき・鼻・黒い便)に注意薬局・訪問看護・医師
糖尿病・脂質薬と食事の管理医師・薬局・栄養士
心房細動脈の乱れがある方は抗凝固薬を続ける医師・訪問看護
禁煙・節酒・運動生活の習慣訪問看護・リハビリ・家族

抗血栓薬と手術・抜歯

抗血栓薬を飲んでいる方は、抜歯や内視鏡などの前に薬をどうするかを医師が判断します。自己判断で止めると、その間に再発する危険があります。訪問歯科や病院にかかるときは、飲んでいる薬を必ず伝えます。

再発のサイン(すぐに救急車)

  • 顔の片側が下がる。うまく笑えない
  • 片方の腕や脚に急に力が入らない
  • 言葉が出ない・ろれつが回らない・言っていることがわからない
  • 急に片方の目が見えない・視野が欠ける
  • 急に激しい頭痛・めまい・ふらつき
  • これらは「様子を見ない」。発症からの時間で治療の選択肢が変わる
前川 裕貴
医師のひとこと前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
脳卒中の再発のサインは、ご家族と介護職の方にこそ知っておいてほしいことです。「少し様子を見よう」とした数時間で、使える治療が変わってしまいます。顔・腕・言葉の3つに変化があれば、迷わず救急車を呼んでくださいと、訪問のたびにお伝えしています。

04飲み込みと誤嚥性肺炎

脳卒中のあとは、飲み込みの障害(嚥下障害)が残ることが多く、食べ物や唾液が気管に入って起こる誤嚥性肺炎が、在宅で最も注意する合併症です。食事の形態と姿勢、口腔ケア、言語聴覚士の評価をチームで組みます。

  • 食事の形態:病院で決めた形態(きざみ・ミキサー・とろみ)を在宅でも守ります。家族が「もう普通の食事でよいだろう」と戻すと危険です。変えるときは言語聴覚士や訪問歯科の評価を受けます。
  • 姿勢:食事のときはできるだけ座り、あごを引く。食後もしばらく起きている。
  • 口腔ケア:毎食後の歯磨き・義歯の清掃。訪問歯科の定期的なケア。口の中の細菌が肺炎の原因になります。
  • サイン:食事中のむせ、食後の咳、痰の増加、微熱、元気がない。むせないで誤嚥することもあるので、微熱や元気のなさにも注意します。

05在宅チームの役割分担

脳卒中後の在宅チーム
職種・事業所担うこと
訪問診療医(かかりつけ医)血圧・抗血栓薬・糖尿病などの管理、再発予防、誤嚥性肺炎の早期治療、リハビリの指示、病院の脳神経内科・外科との連携
訪問看護血圧・脈・服薬の確認、飲み込みと肺炎のサインの観察、皮膚(麻痺側の褥瘡)の観察、家族への介助の指導
訪問リハビリ(PT・OT・ST)動作の練習、装具・用具の助言、言葉と飲み込みのリハビリ、家族への介助方法の指導
ケアマネジャーケアプラン、通所と訪問の組み合わせ、福祉用具・住宅改修、家族の負担の把握
薬局抗血栓薬など多くの薬の一包化と管理、出血のサインの確認
訪問歯科口腔ケア、義歯の調整、飲み込みの評価

06よくある質問

  • 訪問リハは週に何回できる?:介護保険ではケアプランと限度額の範囲で決めます。医療保険の訪問看護ステーションからのリハビリは、訪問看護の回数の決まり(原則週3日)の中で組みます。
  • 回復期病院を退院したら、リハビリは終わり?:病院での集中的なリハビリは終わりますが、在宅での動作の維持は続きます。「維持期」のリハビリは介護保険が中心です。
  • 高次脳機能障害があると、家で何に困る?:段取りができない、忘れる、感情が抑えられない、疲れやすい、などで生活と介護に影響します。作業療法士や、地域の高次脳機能障害の支援拠点に相談します。
  • 身体障害者手帳は?:麻痺や言語の障害で手帳の対象になることがあります。装具や福祉用具の給付、税の控除などに使えます。主治医に相談します。
  • 若い方(40〜64歳)の脳卒中は介護保険を使える?:脳血管疾患は特定疾病に含まれるので、40歳以上なら申請できます。

07受け入れ先の探し方

Med-Tasuki(メドタスキ)では、訪問診療・訪問看護(リハビリ職のいるステーション)・訪問歯科を地域や対応内容で探せます。医療機関・介護事業所の方は、一括依頼で近くの施設にまとめて受け入れを相談できます。

参考にした情報

監修者のプロフィール

前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)
前川 裕貴

Maekawa Hirotaka

脳神経内科専門医・頭痛専門医

地域医療連携サービス「Med-Tasuki」開発者

日本内科学会 内科専門医日本神経学会 神経内科専門医日本頭痛学会 頭痛専門医難病指定医

脳神経内科専門医・頭痛専門医。東京大学医学部附属病院 脳神経内科で診療に従事したのち、訪問診療を行う荏原ホームケアクリニックで頭痛センター長を務める。在宅医療の現場で、患者さんの受け入れ先を探す連絡が今も電話とFAXに頼っていることに課題を感じ、施設どうしがつながる地域医療連携サービス「Med-Tasuki(メドタスキ)」を自ら開発した。

2012〜2018年順天堂大学 医学部 医学科
2018〜2020年東京逓信病院 初期臨床研修
2020〜2023年東京大学医学部附属病院 脳神経内科 特任臨床医
2023年〜埼玉精神神経センター 頭痛専門外来
荏原ホームケアクリニック 頭痛センター長
昭和医科大学 脳神経内科 客員講師
2025年〜株式会社Iris Wellness設立

在宅医療は、ひとつの施設だけでは完結しません。顔の見える連携を、もっと速く、もっと気軽に。現場の「困った」を減らすために、医師として、開発者として取り組んでいます。

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監修:前川 裕貴(脳神経内科専門医・頭痛専門医)/この記事は情報提供を目的としたもので、診断・治療を行うものではありません。受け入れの状況や費用は各施設に、治療の判断は主治医にご相談ください。